先日、建設業を営む社長からこんな相談を受けました。「決算前に利益が出そうだから、法人名義で高い車を買って経費にしたい」というものです。

結論から言うと、これは半分正解で半分間違いです。社用車が経費として認められるかどうかは、車が高いか安いかでは決まりません。決め手になるのは、その車を事業でどれだけ使っているかという一点です。

車種で否認されるわけではない

税務署OBに話を聞くと、外車だから、高級車だからという理由だけで経費が否認されることはないと言います。争点はあくまで事業関連性です。

営業で毎日乗り回している軽自動車より、月に数回しか動かさない高級セダンの方が、実は税務署の目には厳しく映ることがあります。使用頻度と業務内容が説明できるかどうかがすべてです。

プライベート兼用なら按分が必要

問題になりやすいのは、社用車を社長個人のプライベートでも使っているケースです。休日の買い物や家族の送迎に使っているなら、その分は事業経費として認められません。

この場合、車両費や減価償却費、ガソリン代などを事業使用割合に応じて按分する必要があります。たとえば事業使用が7割程度と説明できるなら、経費として計上できるのもおおむね7割までという考え方です。

按分割合を高く見積もりたい気持ちは分かりますが、実態と乖離した割合は調査で必ず突かれます。8割と申告しているのに、休日の買い物レシートの近くに給油記録が集中していれば、説明はすぐに破綻します。

運行記録がない車は弱い

もうひとつの争点は、運行記録の有無です。運行記録がなく、実態も説明できない社用車は、税務調査でほぼ確実に否認の対象になります。

逆に言えば、日付・行き先・用件をきちんと記録している社用車は、税務署に対してかなり強い立場を取れます。記録があるかないかで、同じ車でも扱いがまったく変わるのです。

具体的には、次のような項目をノートやスプレッドシートに残しておくだけで十分です。

  • 利用日と時間帯
  • 行き先(訪問先の会社名や現場名)
  • 用件(商談、現場確認、備品購入など)

難しいシステムを導入する必要はありません。運転のたびにスマホのメモアプリに一行書き込むだけでも、調査官に対する説得力はまったく違ってきます。

記録の有無が結果を分ける

同じ社用車でも、記録がある会社とない会社とでは、調査での結論が正反対になることがあります。記録がある会社は多少割合が高めでも「実態に基づいた申告」として通りやすく、記録がない会社は逆に低い割合でも疑いの目を向けられます。

車種や金額を気にする前に、まず運行記録という一番地味な備えがあるかどうかを確認してみてください。

まだ運行記録簿を用意していないなら、今期中に簡単な様式だけでも整えておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。