先月、売上5億円を超える建設業の社長から、青ざめた顔でLINEが届きました。「税務調査が入って、領収書をかたっぱしから否認されそうです」と。
話を聞けば、原因はほぼ3パターンに絞られていました。宛名の書き方、但し書きの記載、そして飲食費の記録。どれも「知っていれば防げた」ミスです。
今日はそのNG3選を実際のエピソードを交えながら紹介します。心当たりがある方は、今期の領収書をすぐ見直してみてください。
3位:宛名が「上様」——経費否認の直行券
「上様でいいですよね?」とレジで言われて、つい「はい」と答えてしまう場面、ありませんか。
税務上、領収書の宛名には法人名の記載が必要です。「上様」や空欄のままでは、誰が支払ったのかを証明できないとして、経費否認の根拠になります。調査官の立場からすると、宛名のない領収書は「これ、本当に会社の経費ですか?」と突っ込む格好の材料です。
対策はシンプルです。受け取る前に必ず「○○株式会社でお願いします」と伝えること。1枚1枚は小さな手間ですが、それが積み重なって数十万円の追徴を防ぎます。飲食店やタクシーなど、現場で領収書を発行する場面は特に注意が必要です。
2位:但し書きが「お品代」だけ——用途不明は調査対象
次に多いのが、但し書きの問題です。「お品代」「サービス代」「一式」——これらは税務調査では極めて脆弱な記載です。
調査官が領収書を見るとき、まず確認するのが「何に使ったか」です。但し書きが曖昧だと、業務との関連性を証明できません。接待交際費なのか、消耗品費なのか、福利厚生費なのか——科目の判断もできず、全額否認されるリスクが高まります。
ポイントは、受け取る前に「具体的な品目や用途を書いてください」と一言お願いすること。「懇親会飲食代」「打ち合わせ用資料印刷代」など、後から見ても何に使ったか分かる記載が理想です。店舗によっては手書きで対応してくれるケースも多いので、遠慮せずに伝えてみてください。
1位:飲食費の参加者・目的を記録していない——追徴100万円超えのリスク
最も重大なのが、交際費・会議費として処理している飲食費の記録漏れです。
法人が飲食費を経費として計上するには、次の5項目を記録しておく義務があります。
- 飲食等の年月日
- 参加した取引先などの名称
- 参加した人数
- 飲食費の金額
- 飲食した場所の名称と住所
これは租税特別措置法に基づくもので、税務調査では必ずチェックされます。領収書があっても、この記録が抜けていると全額否認されることがあります。
「そんな細かいこと知らなかった」という社長は少なくありません。しかし知らないでは済まされないのが税務の世界です。3年分の飲食費がまとめて問題になれば、追徴課税が100万円を超えるケースも珍しくありません。
対策としては、領収書を受け取ったその場でメモを残す習慣をつけることです。スマートフォンのメモアプリや会計ソフトの写真登録機能を使えば、手間はほとんどかかりません。「誰と・どこで・何の目的で食べたか」、この3点を押さえるだけでも大きな差になります。
今日から実践できる3つのチェックポイント
整理すると、今すぐ動けることは次の3つです。
- 宛名は受け取る前に会社名を伝える
- 但し書きは具体的な品目・用途を書いてもらう
- 飲食費には参加者・目的などの記録を必ずセットで保管する
どれも難しいことではありません。ただ、習慣になっていないと毎回つい流してしまいがちです。
社内で領収書を扱う担当者がいる場合は、このルールを必ず共有してください。社長本人が気をつけていても、担当者が「上様でいいや」と流していては意味がありません。
税務調査はいつ来るか分かりません。準備ができている会社とそうでない会社では、調査の結果が大きく変わります。もし現在、こうした記録管理が徹底できていないなら、今期中に社内ルールとして整備しておくことをおすすめします。顧問税理士がいれば、ひな型を一緒に作ってもらうのが一番早いです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。