先日、ある製造業の社長からこんな話を聞きました。決算のたびに社内の棚卸しはきちんとやっていたのに、外部の倉庫に預けていた在庫を丸ごと数え漏らしていて、税務調査で指摘されて追徴課税になってしまったというのです。

悪気があったわけではありません。むしろ「棚卸しはちゃんとやっている」という自負があった分、指摘されたときのショックは大きかったそうです。

なぜ在庫の計上漏れが追徴につながるのか

期末在庫は、貸借対照表の資産であると同時に、その期の利益を計算するうえで欠かせない要素です。在庫を少なく計上すると、その分だけ売上原価が膨らみ、結果として利益が圧縮されます。

利益が圧縮されるということは、法人税の課税所得も小さくなるということです。だからこそ税務調査では、期末在庫の計上漏れが定番の指摘項目になっています。調査官からすれば、悪意の有無にかかわらず「利益を減らす効果がある処理」は真っ先に確認したい項目なのです。

うっかりと意図的では、ペナルティが違う

ここで重要なのは、単純な数え忘れであっても、意図的な圧縮であっても、税務署から見れば「利益が過少に申告されていた」という事実は変わらないということです。

ただしペナルティの重さは変わります。うっかりミスであれば過少申告加算税で済みますが、意図的だと判断されれば重加算税という、より重いペナルティが課されます。この社長のケースは前者でしたが、それでも本税に加えて加算税と延滞税を支払う羽目になりました。

数え忘れやすい在庫の置き場所

税務調査官が特に注意して見るのは、自社の目が届きにくい場所にある在庫です。具体的には次のような在庫が抜け漏れの温床になります。

  • 外部の倉庫業者に預けている在庫
  • 得意先に向けて発送済みだが、まだ相手先に届いていない積送品
  • 検収前で自社の帳簿には未計上のまま倉庫に眠っている商品

どれも「自社の敷地内にないから、うっかり忘れてしまう」という共通点があります。逆に言えば、調査官はこの共通点を熟知しているからこそ、真っ先にここを確認してくるわけです。

決算前にできる防止策

防止策として一番効果的なのは、棚卸しの対象リストを作る段階で、外部倉庫や委託先を洗い出しておくことです。自社倉庫だけでなく、取引先や物流会社に預けている在庫についても、決算日時点の在庫証明を取り寄せる運用にしておくと、数え忘れそのものが起こりにくくなります。

また、積送品や検収前商品については、出荷基準・検収基準のどちらで収益を認識しているかを経理担当者と税理士の間で改めてすり合わせておくことも有効です。基準がぶれていると、どのタイミングで在庫から外してよいのかが曖昧になり、結果的に計上漏れにつながります。

もし自社の棚卸し手順の中に、外部倉庫や積送品の確認プロセスが明文化されていないなら、今期の決算に向けて一度整理しておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。