先日、飲食店を複数店舗経営している社長から、こんな相談を受けました。
「現金売上の一部を、レジを通さずに別管理していた期間があるんです。もう何年も前の話なんですが、今さら何か問題になりますか」
結論から言うと、これは税務調査の中でも最も重い処分につながる行為です。しかも「もう何年も前だから大丈夫」という感覚は、かなり危険な誤解だと思っておいてください。
なぜ「5年」ではなく「7年」なのか
通常、税務署が過去に遡って調査・課税できる期間(除斥期間)は5年です。多くの社長が「5年前の話ならもう大丈夫」と考えているのは、この原則を知っているからでしょう。
ところが、売上除外のように「意図的に事実を隠したり、偽ったりした」と認定されるケースでは話が変わります。これは税務用語で仮装隠蔽と呼ばれ、この認定が下されると除斥期間は5年から7年に延長されます。
つまり、本人が「時効だから安心」と思っていた6年目・7年目の売上も、まるごと課税対象として掘り起こされてしまうということです。
重加算税35%がのしかかる重み
仮装隠蔽と認定された場合に課されるのが重加算税です。税率は35%。これは、単なる申告漏れに対する過少申告加算税(10〜15%程度)とは比較にならない重さです。
しかも対象になるのは7年分の本税です。そこに重加算税35%が上乗せされ、さらに延滞税まで加わります。
仮に年間300万円の売上を抜いていた会社があったとすると、7年分では2,100万円。ここに法人税相当額、重加算税、延滞税が積み上がっていく計算になります。数百万円どころか、会社の資金繰りを直撃する規模の金額になることも珍しくありません。
「バレなければいい」が通用しない理由
税務調査官は、申告された数字だけを見ているわけではありません。
- レジの取引記録と、実際に計上された売上の整合性
- 仕入量から逆算した想定売上と、申告売上の乖離
- 現金残高や在庫の動きと、帳簿上の数字の一致度
こうした複数の角度から突き合わせて、不自然な差異がないかを確認していきます。仕入は確保しているのに、それに見合う売上が計上されていない。この一点だけでも、調査官にとっては十分な着眼点になります。
「現金商売だからわからないだろう」という発想は、調査の現場ではむしろ最初に疑われるポイントだと考えておいた方がいいでしょう。
誤魔化しは割に合わない
売上を抜いて手元に残る金額と、後で発生するリスクを天秤にかけると、明らかに割に合いません。7年分の追徴、重加算税35%、延滞税、そして何より税務署からの信用を失うこと。一度この烙印を押されると、その後の調査でも継続して厳しい目で見られるようになります。
もし過去に心当たりがあるなら、自主的に修正申告をすることで、重加算税ではなく過少申告加算税で済む可能性も出てきます。放置する期間が長くなるほど、リスクは膨らむ一方です。
心当たりのある社長は、今この瞬間に動くのが一番リスクを小さくできるタイミングだと思います。まずは顧問税理士に、正直に状況を相談することから始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。