先日、ある社長からこんな話を聞きました。「数年前に重加算税を払ったんですが、それ以来2〜3年おきに調査が入るようになった気がするんです」。単なる偶然だと思っていたそうですが、実はこれ、偶然ではありません。

重加算税は「その場限りの罰金」ではない

重加算税というと、本税に35%(無申告の場合は40%)が上乗せされるペナルティというイメージが強いと思います。もちろんそれ自体も重い負担ですが、本当に怖いのはそこではありません。

重加算税を課された会社には、税務署内部の記録に「重加算税課税歴あり」という履歴が残ります。この履歴は、その後の税務調査の対象を選ぶ際に、優先度を引き上げる要因として使われ続けるのです。

つまり、一度「仮装・隠蔽があった会社」というレッテルを貼られると、翌年以降の申告内容がどれだけ適正であっても、しばらくの間は「また何かやっているのでは」という目で見られ続けることになります。

数年おきに調査が来る会社には共通点がある

税務署OBの方に聞いた話ですが、数年ごとに繰り返し調査が入る会社には、こうした課税歴を持つケースが多いそうです。

通常、税務調査の対象選定は業種特性や売上規模、申告内容の変動幅など複数の指標をもとに行われます。そこに「過去の重加算税歴」という要素が加わると、他の会社よりも優先順位が一段階、下手をすれば二段階は上がると考えたほうがいいでしょう。

一度の調査で数百万円の申告漏れが見つかり、重加算税を含めて数百万円を追徴されたとします。目先の負担としてはそこで区切りがついたように感じるかもしれません。

ですが実際には、そこから数年おきに調査官が訪れ、そのたびに

  • 資料の準備に数日〜数週間を費やす
  • 顧問税理士との打ち合わせに時間を取られる
  • 調査期間中は経営判断に集中できない

という状態が繰り返されます。これは金銭的なコストであると同時に、経営者の心理的な負担としても決して軽くありません。

「安く済ませたつもり」が一番高くつく

税務調査で否認されるリスクを避けたいと考えて、経費計上をやや強引にしたり、売上の一部を計上しなかったりする誘惑は、正直どの会社にもあるものです。

しかし、目先で浮く数十万円、数百万円と引き換えに、その後何年にもわたって「調査の常連」というポジションを引き受けることになるとしたら、割に合うでしょうか。

一度失った信用は、翌年の決算書をどれだけきれいに作っても、すぐには回復しません。税務署側からすれば「以前ごまかした会社が、今回は本当に大丈夫なのか」を確認する作業そのものが調査の目的になってしまうからです。

結局、正しい帳簿が一番安い税務対策

遠回りに聞こえるかもしれませんが、日々の記帳を丁寧に行い、証憑をきちんと残し、グレーな処理をあらかじめ顧問税理士に相談しておく。これが結果的に最もコストの低い税務対策です。

調査そのものをゼロにすることはできませんが、「要注意先」として繰り返しマークされる状態からは確実に抜け出せます。調査に来られても淡々と対応できる帳簿があれば、それだけで心理的な負担も大きく変わってくるはずです。

もし心当たりのある処理が過去にあるなら、次の決算に向けて一度、顧問税理士と一緒に帳簿の総点検をしておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。