先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。「経理担当から『領収書がない経費精算が増えています』と言われたのですが、これって問題になりますか」。
結論から言うと、これは放置すると税務調査で確実に狙われるポイントです。今日はその理由と、今すぐできる対策をお話しします。
レシートのない経費精算、何がまずいのか
税務署OBの方に取材した際、こんな話を聞きました。「レシートのない経費精算が常態化している会社は、経費全体の信頼性を疑う」というのです。
1件や2件、うっかり紛失したというレベルなら大きな問題にはなりません。しかし「毎月何件も領収書がない」「特定の担当者に集中している」となると話は別です。調査官の目には、経費全体が「本当に事業のために使われたのか怪しい」と映ります。
一度そう疑われると、レシートがある経費まで細かくチェックされることになりかねません。つまり紛失1件のダメージが、会社全体の調査に波及するわけです。
出金伝票は「例外」としてなら認められる
とはいえ、領収書を紛失したら一発アウトというわけでもありません。日付、金額、支払先、目的をきちんと記録した出金伝票を作成しておけば、経費として認められる余地はあります。
実際、電車のワンマン運賃やご祝儀・香典など、そもそも領収書が出にくい支出については、出金伝票による記録が実務上の標準になっています。
ただしこれはあくまで「例外的な処理」だという点を忘れてはいけません。税務署OBいわく「出金伝票だらけなら話は別。架空経費を疑って深掘りする」とのことです。
出金伝票が経費の大半を占めている会社は、それ自体が「領収書を用意できない=実態のない支出があるのではないか」というシグナルになってしまうのです。本来は例外処理であるはずのものが、常態化した瞬間にリスクに変わります。
なぜ紛失が「常態化」してしまうのか
多くの会社で紛失が増える理由は、実はシンプルです。経費精算のルールが曖昧で、レシートを財布やカバンに入れっぱなしにする習慣が社内に染み付いているからです。
特に外回りの多い営業担当や、経営者自身の接待交際費でこの傾向が強く出ます。月末にまとめて精算しようとして、肝心の紙が見当たらない。よくある話ですが、これが積み重なると先ほどの「常態化」につながっていきます。
証憑管理の仕組み化が最も簡単な対策
今の時代、この問題は驚くほど簡単に解決できます。支払った直後にスマホで撮影し、クラウドの経費精算システムに保存する。この一手間を社内ルールとして徹底するだけで、紛失そのものがほぼなくなります。
領収書を受け取った瞬間に写真を撮る。この習慣を経営者自身が実践し、社員にも求める。それだけで、出金伝票に頼らざるを得ない場面は劇的に減ります。
仕組み化のコストはほとんどゼロに近いのに、税務調査での防御力は大きく変わります。むしろ「証憑管理がしっかりしている会社」という印象を調査官に与えられれば、他の項目についても深掘りされにくくなるという副次効果もあります。
まだ経費精算のルールを紙とExcelでやっている、あるいは特に決めていないという会社は、この機会に一度見直してみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。