先日、都内で建設業を営む社長からこんな相談を受けました。「一人親方に外注費として払っていた分が、税務調査で給与だと言われそうなんです」。金額を聞くと、年間で数百万円規模です。もし給与認定されれば、消費税の仕入税額控除が使えなくなるだけでなく、源泉所得税の徴収漏れとして追徴される。ダブルパンチどころか、延滞税まで含めれば三重苦になりかねません。
なぜ税務署は外注費を狙うのか
外注費は、税務調査で必ずと言っていいほどチェックされる項目です。理由はシンプルで、「外注」という名目にしておけば、会社側は消費税の仕入税額控除を受けられ、源泉徴収の義務も社会保険料の負担も発生しません。会社にとって都合がいい分、税務署からすれば「本当に外注なのか」を疑う動機がそこにあるわけです。
実態が社員と変わらないのに、契約書だけ業務委託にしている。これは決して珍しいケースではなく、むしろ税務調査でよく見つかるパターンだと言われています。
判断基準は「実態」にある
外注か給与かを分けるポイントは、契約書の文言ではありません。実際の働き方がどうなっているかです。具体的には次のような点が見られます。
- 指揮命令を受けているか(発注者が業務の進め方を細かく指示していないか)
- 時間的な拘束があるか(出勤時間や勤務時間が決められていないか)
- 道具や材料は誰の負担か(会社が工具や資材を用意していないか)
- 業務を他人に代わってもらえるか(本人以外が代替できない場合は雇用に近いと見られやすい)
例えば、毎朝9時に現場に来て、会社の指示通りに動き、会社の道具を使って作業する。これでは契約書に「業務委託契約」と書いてあっても、実態は雇用契約とほぼ同じだと判断されてしまいます。
給与認定されるとどうなるか
実際に給与と認定された場合の影響は、想像以上に大きくなります。
まず消費税の面では、外注費として計上していた分の仕入税額控除が否認されます。給与は消費税の課税対象外の支出なので、控除の対象からそもそも外れるためです。数年分まとめて否認されれば、その金額はかなりの規模になります。
さらに源泉所得税です。本来給与から天引きすべきだった源泉徴収を怠っていたことになるため、過去に遡って徴収漏れ分が追徴されます。ここに延滞税や加算税も加わってきますから、資金繰りへのインパクトは軽視できません。
対策は「契約書」より「働き方」
よくある誤解が、業務委託契約書さえきちんと作っておけば安心、というものです。しかし税務調査では、契約書の文言よりも実際の働き方が重視されます。契約書は業務委託になっているのに、実態が雇用そのものというケースは、むしろ調査官にとって格好の指摘材料です。
本当に対策すべきは、働き方そのものを外注の形に整えることです。具体的には、業務の進め方は相手の裁量に任せる、勤務時間を指定しない、道具や材料は相手方に用意してもらう、他の人に代替してもらうことも認める。こうした運用面の見直しが、契約書の整備よりもずっと効いてきます。
一人親方や個人事業主に業務を発注している会社ほど、一度自社の外注先との関係を見直してみる価値があります。今期のうちに働き方の実態を点検しておくのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。