先日、ある社長からこんな相談を受けました。保険営業から「変額保険なら運用でお金が増える可能性があり、しかも節税にもなります」と勧められ、契約しようか迷っているとのことでした。
話を聞いてみると、その営業トークには大事な部分が抜けていました。運用がうまくいかなかった場合の話です。
損金算入のルールは他の保険と同じ
まず押さえておきたいのは、変額保険だからといって損金算入のルールが特別優遇されるわけではないということです。
法人保険の損金算入は、解約返戻率によって区分が決まります。返戻率が高くなるほど、資産計上しなければならない割合が増え、単純に全額損金にできるわけではありません。これは定期保険でも変額保険でも変わらない、共通のルールです。
「変額だから運用益が乗る分、節税効果も大きい」という説明を受けたら、まずこの前提を確認してください。運用のうまい下手と、損金算入できるかどうかは、まったく別の話です。
運用がうまくいかなければ、会社のお金が減る
変額保険の本質は、保険料の一部を特別勘定で株式や債券などに投資し、その運用実績によって将来受け取る金額が変動する仕組みにあります。
運用がうまくいけば解約返戻金は増えます。しかしうまくいかなければ、払い込んだ保険料の総額を下回ることも普通にあります。いわゆる元本割れです。
ここで見落とされがちなのが、その運用リスクを負っているのは会社の資金だという点です。社長個人の資産運用であれば自己責任で済みますが、法人契約の場合、運用の失敗は会社のバランスシートに直接影響します。
決算対策として保険料を払い込んだつもりが、数年後に解約してみたら「思ったより戻ってこなかった」というケースは、実際の税務相談の現場でも珍しくありません。
「増える可能性」という言葉のトリック
保険営業のトークでよく使われるのが「増える可能性があります」という表現です。これは嘘ではありませんが、同時に「減る可能性もある」ことの裏返しでもあります。
特に近年は、株式市場や為替の変動が大きく、特別勘定の運用実績も年によってばらつきが出やすい状況です。円建てであっても市場変動リスクはありますし、外貨建ての商品であれば為替リスクも重なってきます。
節税目的で保険を検討する場合、まず確認すべきは「損金にできる金額がいくらか」ではなく、「解約するタイミングでいくら戻ってくる見込みか、その見込みにはどれだけの振れ幅があるか」です。
運用実績のシミュレーションを見せてもらう際も、必ず好調時だけでなく不調時の試算も出してもらいましょう。片方だけの資料しか出てこない場合は、それ自体が注意信号です。
節税と資産運用は分けて考える
法人が保険に加入する目的は、本来は保障や退職金準備、事業承継対策などであるはずです。節税はあくまで副次的な効果であり、それ自体を主目的にすると判断を誤りやすくなります。
変額保険のように運用リスクを伴う商品であればなおさらです。節税効果の説明だけを聞いて即決するのではなく、運用がうまくいかなかった場合に会社の資金繰りにどう影響するかまで含めて検討する。それが本来あるべき順番です。
もし今、変額保険の提案を受けている最中であれば、契約前に一度、顧問税理士に運用リスクと損金算入の実態を確認しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。