先月、30代の後継者候補の方からこんな相談を受けました。「父の会社を継ぐことにはなったのですが、税金のことを考えると夜も眠れません」と。

話を聞くと、経営そのものへの不安以上に、自社株を引き継ぐタイミングでどれくらいの税金がかかるのか、誰にも教えてもらえていないことが一番のストレスになっていました。これは、これから会社を継ぐ方に共通する悩みだと感じています。

結論から言うと、今後継者の立場にいる方が最初に押さえるべきは「事業承継税制の特例」という制度と、その期限が2027年12月末に迫っているという事実です。

なぜ「今」知っておく必要があるのか

事業承継税制の特例は、自社株を先代から引き継ぐ際にかかる贈与税・相続税の納税を猶予してくれる制度です。優良企業であればあるほど自社株の評価額は高くなり、何も対策をしなければ数千万円規模の税負担が発生することも珍しくありません。

この特例を使うには、都道府県に特例承継計画を提出したうえで、実際の贈与や相続を2027年12月末までに終える必要があります。逆に言えば、期限に間に合わなければ猶予割合が縮小した一般措置しか使えなくなり、税負担は重くなります。

後継者として会社を継ぐことが決まっているなら、この期限を意識して先代や顧問税理士とスケジュールを共有しておくことが、最初の一歩になります。

「猶予」であって「免除」ではないという誤解

ここで多くの後継者が誤解しがちなのが、猶予と免除を同じ意味だと捉えてしまうことです。

猶予はあくまで納税を先送りする措置であり、税金そのものがなくなるわけではありません。免除されるのは、後継者自身が亡くなった場合や、さらに次の世代へ会社を再承継した場合など、限定的な事由に該当したときだけです。

つまり、会社を売却したり、事業をやめたりすると、猶予されていた税額に利子税が上乗せされて一括で請求される可能性があります。将来的に会社を手放す選択肢を少しでも考えているなら、この制度を安易に選ぶのはリスクになり得ます。

要件は複雑、だからこそ早めの相談を

特例承継計画の提出自体はそれほど難しくありませんが、実際に納税猶予を受けるには後継者の要件、会社の要件、先代経営者の要件と、細かい条件を一つひとつクリアする必要があります。

さらに猶予を受けたあとも、5年間は毎年、その後は3年ごとに継続届出を提出しなければなりません。届出を一つ忘れただけで猶予が打ち切られ、利子税付きで一括納税を求められるケースもあります。

継ぐことが決まった今の段階で、自社株の評価額がどの程度になりそうか、そしてこの特例が自社にとって本当にメリットがあるのかを、顧問税理士と一緒に確認しておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。