先日、年商3億円の建設業を営む社長から「うちの税金、なんか高すぎない?」という相談を受けました。帳簿を一緒に確認して、正直驚きました。毎年数百万単位の節税チャンスを、何年もそのまま見逃し続けていたんです。

社長は「顧問税理士がいるから問題ない」と思っていたそうです。でも税理士に「もっと節税できませんか」と積極的に聞いたことは一度もなかった、と。こういう社長、実はかなり多いんです。

今日は、中小企業オーナーが見落としがちな「2つの穴」と、それを組み合わせることで年間1000万円以上の節税が現実になる話をします。

穴① 経費の取りこぼし——規程がないだけで年数十万円が消えている

「経費はちゃんと落としている」という社長は多いのですが、実際に確認すると役員社宅出張日当規程を活用できていないケースが圧倒的に多い。

役員社宅とは、会社が賃貸物件を借り上げ、社長に転貸する仕組みです。社宅として貸し出す場合、社長が払う家賃は税法上の計算式に基づく「適正賃料」でよく、これが市場賃料より大幅に安くなる。差額が実質的な経費になるわけです。月20万円の家賃物件なら、うまく設計すると年間150〜200万円を経費化できるケースもあります。

出張日当は、旅費規程を整備するだけで非課税の手当が支給できる仕組みです。日当は社会保険料の対象にもならないため、同じ金額を給与で払うより社長の手取りが増えやすい。1泊出張で1万円の日当を年50回出すなら、それだけで年50万円分の節税効果が生まれます。

どちらも「やろうと思えばすぐできる」ことなのに、規程を作っていない、あるいは存在を知らない社長が本当に多い。もったいない話です。

穴② 所得が社長一人に集中している

次に多い問題が、役員報酬の配分です。年収3000万円を社長一人が受け取り、配偶者は収入ゼロ——というケースを見かけます。

日本の所得税は累進課税で、所得が多いほど税率が上がります。年収3000万円なら所得税率は最大45%にのぼります。一方、配偶者や子どもに適正な報酬を払って所得を分散すると、それぞれが低い税率で課税されるため、家族全体の税負担が大きく下がります。

例えば社長が3000万円を一人で受け取るより、社長と配偶者で1500万円ずつ受け取る方が、同じ手取りを確保するために払う税金は数百万円単位で変わります。もちろん「実際に業務に従事している」ことが前提ですし、実態を伴わない報酬は税務署に否認されるリスクもあるので、設計と実態の整備がセットで必要です。

この2つを組み合わせると、年1000万超の節税が現実になる

経費の整備と所得分散は、それぞれ単独でも効果があります。でも、この2つを同時に組み合わせると話が変わってきます。

役員社宅と旅費規程で年200万円の経費を積み増しつつ、家族役員への分散で課税所得を圧縮する。このW活用で法人税・所得税・社会保険料の合計が年800〜1200万円変わるケースは、年商2〜5億クラスの中小企業でも珍しくありません。

「年1000万の節税なんて大企業の話でしょ」と思う社長もいますが、実態はそうじゃない。むしろ中小企業オーナーこそ、この仕組みの恩恵が大きい。

動く前に必ずやること

ただし、焦りは禁物です。役員社宅も家族役員への報酬も、税務調査でよく見られるポイントです。「形だけ整えた」では否認されるリスクがあり、むしろペナルティが発生することもある。

規程の整備、議事録の作成、業務実態の証明——手順をきちんと踏むことが大前提です。まずは顧問税理士に「うちの場合、この2つを組み合わせるとどれくらい変わりますか?」と試算を依頼してみてください。数字を見るだけで、自社の節税余地がはっきり見えてきます。

役員社宅や出張旅費規程をまだ整備していないなら、今期の決算前に動くのがおすすめです。規程は期の途中からでも使えるケースが多く、早く動くほど今期の節税に直結します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。