先日、顧問先の社長からこんな連絡がありました。「税理士に小規模企業共済を勧められたんですが、正直まだ入っていなくて…」と。
話を聞いてみると、その社長、制度の存在は知っていたんです。でも「なんか手続きが面倒そう」「どうせ大した節税にならないだろう」と、ずっと後回しにしていたと言うんです。
それ、毎年84万円を捨てているのと同じですよ。
掛金がそのまま「控除」になる強さ
小規模企業共済は、中小企業の社長・個人事業主が加入できる国の退職金制度です。運営しているのは中小機構という国の機関なので、信頼性は折り紙付き。
最大の特徴は、掛金が全額「所得控除」になる点です。生命保険料控除のように上限が数万円なんて話ではありません。月最大7万円、年間で84万円まるごと控除できます。
所得税率が33%の社長なら、それだけで年間約27万円の節税効果です。住民税も合わせると、実質的な手取りへのインパクトはさらに大きくなります。
10年続ければ270万円。これを「なんとなく後回し」にしていた代償は、想像以上に重いんです。
節税しながら老後資金も積み立てられる
ここで「でも掛金を払い続けるのは資金繰りが心配…」と思った方もいるかもしれません。
安心してください。払った掛金は消えません。将来、廃業や引退のタイミングで「共済金」として手元に戻ってきます。しかも、その受け取り方を「一括」にすれば退職所得として扱われるので、退職所得控除が適用できます。
積み立て時は所得控除、受け取り時は退職所得控除。二段階で税金が引き下げられる、かなり優遇された設計になっているんです。
実際どれくらい得になるか、試算してみた
仮に年収2,000万円の社長が月7万円で加入し、20年間続けたとしましょう。
掛金の総額は1,680万円。このうち節税できた金額(税率33%換算)は累計で約554万円です。さらに、受け取り時の退職所得控除(20年なら800万円)が適用されれば、ほとんど税金なしで手元に戻ってくる計算になります。
「国が用意してくれた節税策の中で、これほどシンプルに強い制度はそうない」というのが、多くの税理士の本音です。
注意点も押さえておこう
ただし、いくつか知っておくべきポイントがあります。
まず、加入できるのは常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の中小企業の役員または個人事業主に限られます。大企業の社長や、従業員が多い会社は対象外です。
次に、掛金は途中で減額・停止できますが、任意解約の場合は元本割れのリスクがあります。あくまで「長期で続ける」前提で加入するものです。短期の資金繰りに困ったときの切り崩し目的には向いていません。
それから、掛金の変更手続きや納付方法なども、加入後に状況に応じて柔軟に調整できるので、最初から「月7万円フル」でなくても構いません。余裕のある金額からスタートして、業績に合わせて増額する社長も多いです。
今期中に動くのが正解
控除が効くのは「払った年」です。今年の税金を減らしたければ、今年中に加入して、今年中に掛金を払う必要があります。決算が近づいてから慌てて動いても間に合わないケースもあるので、早めに確認しておくのが賢明です。
まだ加入していないなら、今月中に税理士に相談することをおすすめします。手続き自体はそれほど複雑ではなく、最短で翌月から掛金が始められます。
毎年84万円の控除枠があるのに使わないまま年を越すのは、もったいない以外の何ものでもありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。