先日、創業15年の建設会社を経営する社長とお話ししていたとき、「iDeCoって個人がやるやつでしょ?うちには関係ないと思ってた」とおっしゃっていました。
あなたも、似たようなことを思っていませんか?
実は、企業年金(厚生年金基金や企業型DC)のない中小企業の役員は、iDeCoに毎月最大2万3,000円——年間で27万6,000円まで拠出できます。そして、この全額が所得控除として使えるんです。
年27.6万円が税金から丸ごと消える
iDeCoの最大の強みは、「掛金が全額所得控除になる」という点です。
ふるさと納税も所得控除の一種ですが、iDeCoは上限額の規模が違います。年収3,000万円の社長でも、年収800万円の社長でも、月2万3,000円という同じ枠の中で動くため、所得が高いほど実際の節税額は大きくなります。
実効税率が30%の社長なら、年間で約8万円の税負担が減ります。5年続ければ40万円超、10年なら80万円を超える節税になります。しかも、これは「節税しながら老後資金が積み上がっている」状況ですから、一石二鳥どころか一石三鳥です。
iDeCoは「三段構え」の税優遇
iDeCoの本当においしいところは、節税効果が積立時だけではないことです。大きく分けて、三段階で税の優遇を受けられます。
まず、掛金を拠出するたびに全額が所得控除になる。これが一段目です。
二段目は、運用益が非課税であること。株式や投資信託の運用益には通常約20%の税がかかりますが、iDeCo口座内では非課税で再投資されます。長期で積み立てるほど、この差は雪だるま式に開いていきます。
三段目は、受取時の優遇です。一時金で受け取れば退職所得控除が、年金形式で受け取れば公的年金等控除が使えます。ざっくり言うと、受取時にも大きな非課税枠があるということです。
この三段構えが重なることで、iDeCoは「今の節税」と「将来の資産形成」を同時に実現できる制度になっています。証券会社の特定口座で運用するより、トータルの税コストが大幅に抑えられるわけです。
知らずに放置している社長が多い現実
多くの中小企業の決算に関わっていると、驚くほどiDeCoを活用していない社長が多いことに気づきます。
理由を聞くと、「手続きが面倒そうで後回しにしていた」「運用リスクが怖い」「60歳まで引き出せないと聞いて躊躇した」という声が出てきます。どれも気持ちはわかります。
ただ、60歳まで引き出せない制約は、「使い込めないから確実に積み上がる」とも言い換えられます。老後資金を強制的に積み立てながら、毎年確実に節税できるのであれば、制約をデメリットとだけ捉えるのはもったいない話です。
企業型DCがある場合は要注意
ひとつだけ注意していただきたいのが、会社に企業型確定拠出年金(企業型DC)がある場合です。
この場合、iDeCoの掛金上限が変わってくることがあります(会社の掛金状況によっては月1万2,000円になるケースも)。また、会社の規約によっては加入自体ができないこともあります。
2022年の法改正で企業型DCとiDeCoの併用条件は緩和されましたが、「うちには関係ない」と思い込まず、まず自社の状況を確認することが大切です。
今から動き出すなら
iDeCoは申し込みから口座開設まで1〜2ヶ月程度かかります。年内に拠出を始めれば、その分は今年の所得控除として確定申告に使えます。
「社長だからiDeCoは自分には関係ない」と思っていた方、まずは自社に企業年金制度があるかどうかを確認するところから始めてみてください。何もしないまま年を越してしまうより、小さな一歩を今期中に踏み出すことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。