先日、資産10億円超の会社オーナーからこんな相談がありました。「毎年110万円ずつ子どもに贈与してきたんですが、これって今でも有効ですか?」
その方は10年以上、コツコツと贈与を続けてきました。ところが2024年の税制改正で、その対策の効果が大幅に薄れてしまっていたのです。このような「気づかないまま旧ルールのまま続けている」ケースが、今とても多くなっています。
ここでは、2024年以降に実質的に「使えなくなった」または「見直しが必要になった」相続節税策を3つ、重要度の高い順にお伝えします。
第3位:毎年110万円の暦年贈与——「7年ルール」が致命傷に
贈与税には年間110万円の基礎控除があります。これを使って毎年少しずつ財産を移転していく「暦年贈与」は、長年にわたって相続対策の王道とされてきました。
ところが2024年から、大きなルール変更が施行されました。以前は「相続開始前3年以内の贈与」が相続財産に加算されていましたが、これが7年以内に延長されたのです。
たとえば、70歳から暦年贈与を始め、78歳で亡くなったとしましょう。8年間で110万円×8回=880万円を贈与したとしても、そのうち7年分の770万円は相続財産に引き戻されてしまいます。節税効果が出るのは最初の1年分だけ、という計算になるわけです。
「これまでどおり贈与し続ければいい」と思っている方は多いのですが、7年という期間の重みをぜひ一度試算してみてください。
第2位:区分所有マンション購入による評価圧縮——通達改正で旨みが激減
タワーマンションの一室を相続対策として買う——。一時期、富裕層の間で流行した手法です。市場価格と相続税評価額の差が大きく、評価を大幅に圧縮できることが魅力でした。
たとえば、市場価格2億円のマンションでも、路線価ベースの評価額が4,000万円程度になるケースがあり、相続税の計算上は「4,000万円の財産」として扱われていたのです。
しかし、国税庁は2024年1月から区分所有マンションの評価方法を大幅に見直しました。市場価格との乖離が60%を超えるような物件は評価額が引き上げられ、節税効果が著しく縮小する仕組みになっています。
「相続対策でマンションを買いたい」というご相談は今でも多いのですが、以前ほどの節税効果は期待できません。購入前に必ず税理士に試算してもらうことをおすすめします。
第1位:相続時精算課税の「旧ルールのまま放置」——実は今が見直しのチャンス
これが最も見落とされがちなポイントです。相続時精算課税とは、2,500万円まで贈与税を非課税にできる制度ですが、「贈与した財産は相続時に全額持ち戻される」という特性から、敬遠されてきました。
ところが2024年から、この制度に年間110万円の基礎控除が新設されました。そしてこの110万円枠は、暦年贈与と違って「7年加算ルールの対象外」になっているのです。
つまり、相続時精算課税を選択した上で毎年110万円以内の贈与を続ければ、相続直前の7年間でも計770万円が相続財産に加算されません。暦年贈与の弱点を補う形で、むしろ現行ルールでは有利な使い方ができるようになっています。
ただし、相続時精算課税は一度選択すると暦年贈与に戻れません。また、2,500万円を超えた分は贈与税がかかります。事前のシミュレーションなしに動くと逆効果になるケースもあるので注意が必要です。
結局、今何をすればいいのか
3つをまとめると、こうなります。
- 暦年贈与だけに頼る戦略は、長期的に見ると効果が出にくくなっています
- マンション購入による評価圧縮は、現行ルール下では過去ほど機能しません
- 相続時精算課税の新ルール活用は、見直していない方にとって今がチャンスです
ここ数年で制度の前提が大きく変わりました。5年以上前に立てた相続対策をそのまま続けている方は、一度現状を棚卸しすることを強くおすすめします。
特に「毎年贈与だけやっておけば大丈夫」と思っている方は要注意です。税理士に「2024年以降の改正を踏まえた見直し」を依頼するひと言から、始めてみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。