先日、法人化して2年目のITコンサルタントの方からこんな一言をいただきました。「個人事業主のときより税金が増えた気がするんですよね。法人化って正直、意味あったんですかね?」

こういう相談、実は珍しくありません。法人化しても「使える経費が増えた実感がない」という社長は、たいてい同じところで躓いています。個人では絶対に経費にできなかったものが、法人になった瞬間に合法的に落とせるようになる。その5つを今日はご紹介します。

第5位:出張日当

意外と知られていないのが出張日当です。社員を出張させるとき、交通費・宿泊費とは別に「日当」を払えることをご存知でしょうか。社長自身も対象です。

「旅費規程」という社内規程を作れば、1日あたり3,000円〜10,000円程度の日当を非課税で支給できます。受け取る側の社長には所得税がかからず、払う側の法人は経費として計上できる。両方で節税できる二重の仕組みです。

難しい手続きは不要で、旅費規程さえ整備すれば来期からすぐに使えます。まだ作っていない会社は、今期中に準備しておくことをおすすめします。

第4位:法人保険料

個人で生命保険や医療保険を払っていると、節税効果は「生命保険料控除」の枠内に限られます。しかし法人で契約すると、話が変わります。

保険の種類によっては、支払った保険料の一部または全額を損金(経費)として計上できます。死亡保障と節税を組み合わせた経営者保険は、中小企業のオーナー社長に広く活用されています。

ただし、2019年の国税庁通達以降、過度な節税効果を謳う商品への規制が強化されました。「節税になる」という営業トークだけで飛びつくのは危険です。加入前に必ず税理士と一緒に確認するようにしてください。

第3位:家族への役員報酬

これは、多くの社長が見落としている大きなチャンスです。

配偶者や親族を会社の役員にして、月20〜30万円の役員報酬を払う。個人事業主では「専従者給与」に制限がありましたが、法人では経営に参加している実態があれば相場の範囲内で自由に設定できます。

ポイントは所得の分散です。社長一人に年収1,500万円が集中するより、社長800万円・配偶者600万円に分けると、世帯全体の税負担が大きく変わります。所得税は高収入になるほど税率が上がる累進課税ですから、分散が効くのです。

「名前だけ役員にすればいい」という誤解は禁物です。実態のない報酬は税務調査で否認されます。実際の業務分担を明確にしておくことが大前提です。

第2位:役員社宅

個人で家を借りると、家賃は全額手取りから払う必要があります。しかし法人が社宅として物件を契約し、社長に貸し出す形にするだけで、状況がまるで変わります。

法人が支払う家賃の大部分が経費になり、社長の自己負担は「賃貸料相当額」と呼ばれる小さな金額だけ。月30万円の物件を法人契約にした場合、社長の実質負担が3〜5万円程度に収まるケースも珍しくありません。

月25万円前後が法人経費になれば、年間で300万円近い金額を経費化できる計算です。一つの施策でこれだけのインパクトが出せるのは、役員社宅ならではです。物件の種類や広さによって計算方法が変わりますので、具体的な数字は税理士に試算してもらうのがスムーズです。

第1位:役員退職金

ここまでお伝えしてきた施策の中で、インパクトが桁違いなのがこれです。

役員退職金には、通常の給与にはない2つの大きな優遇があります。ひとつは「退職所得控除」。勤続年数が長いほど控除額が大きくなり、たとえば30年勤続なら1,500万円が非課税になります。もうひとつは「1/2課税」。退職所得は残った金額を半分にしてから税率を掛けるため、給与所得とはまったく別の計算になります。

結果として、数千万円の退職金でも実質的な税負担が数百万円に収まることも珍しくありません。払う法人側も支払った退職金を全額損金算入できますから、その年の法人税を大幅に圧縮できます。

「退職金の積立をどう設計するか」は、法人運営の中でも特に重要な長期戦略です。会社を設立した早い段階から税理士と一緒に設計しておくことを強くおすすめします。


この5つを使いこなしている社長と、知らないまま過ごしている社長とでは、同じ売上でも手元に残るお金がまるで違ってきます。特に役員社宅と役員退職金は「今すぐ」というわけにいかない施策もあるので、後回しにしていると手遅れになることもあります。

まず顧問税理士に「この5つ、うちで使えますか?」と聞いてみるだけでも、大きな話になるかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。