先日、年商2億円ほどの不動産管理会社を経営する社長から、こんな相談を受けました。
「顧問税理士に任せているのに、今期の法人税がやたら高くて……。何か見落としてないか確認してもらえませんか」
決算書を拝見すると、ぞっとしました。3月決算で計上できたはずの損金が、3か所で根こそぎ抜け落ちていたのです。試算してみると、見落とした損金の合計は300万円近く。税率30%で計算すれば、約90万円の法人税を余分に納めていた計算になります。
3月決算の会社には、年度末の慌ただしさの中で見落とされやすい「落とし穴」が3つあります。それぞれ確認していきましょう。
3位:未払費用の計上漏れ
最初に見逃しやすいのが、未払費用の扱いです。3月末時点で「確定している費用」は、実際の支払いが4月以降でも損金に計上できます。
たとえば、社会保険料の会社負担分。3月分の保険料は4月末払いが一般的ですが、金額は3月末で確定しています。これは3月期の未払費用として計上できるのです。外注費も同様で、3月中に作業が完了していれば、請求書の支払いが翌月でも損金算入できます。
「支払ったものしか経費にできない」という思い込みが、ここで命取りになります。この一点だけで、数十万円単位の差が出ることは珍しくありません。
2位:短期前払費用の特例
次に、意外と使われていないのが「短期前払費用の特例」です。翌期分の費用であっても、1年以内のサービスに対して3月末までに一括前払いすれば、今期の損金に算入できるというルールです。
典型的なのが家賃や保険料です。月20万円のオフィス賃料を4月〜翌3月の12か月分、240万円を3月末日までにまとめて振り込む。それだけで240万円がそのまま今期の損金になります。
「まとまったキャッシュが必要では?」と思うかもしれませんが、どうせ来年支払う費用です。繰り上げるだけなら、資金繰りへの影響は限定的です。ただし継続適用が条件なので、「今期だけ」の一時的な前払いは認められません。翌期以降も同じように処理し続ける前提で活用してください。
1位:少額減価償却資産の特例の見落とし
最も損をしているケースが多いのが、この特例の見落としです。
中小企業には「30万円未満の資産を即時に全額損金化できる」という特例があります(年間300万円まで)。PCやプリンター、業務用の家具、カメラや録音機材……。こういったものを購入したとき、通常は4〜5年かけて減価償却するところを、購入した年に一括で損金に落とせます。
年間300万円の上限があるとはいえ、うまく使えば大きな節税効果を生み出せます。にもかかわらず、この特例の存在を知らずに通常の減価償却で処理しているケースが少なくありません。適用を忘れるのは純粋な「損」です。備品の購入タイミングも含めて、顧問税理士と事前にすり合わせておくことをおすすめします。
3月が決算月の会社は、3月に入ると経営者も経理担当者も慌ただしくなります。その忙しさの中で、年に一度しか登場しないルールが抜け落ちていくのです。
整理するとこういうことです。未払費用は「支払い前でも確定していれば計上できる」、短期前払費用は「翌年分の家賃・保険料を3月末前払いで今期損金化できる」、少額減価償却は「30万円未満の備品を一括損金化できる(年300万円上限)」。
この3つを決算の2〜3か月前に顧問税理士と確認するだけで、今期の損金はかなり変わります。まだ「決算月になってから考える」スタイルなら、今すぐカレンダーに「12月:税理士と決算前打ち合わせ」と入れておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。