先日、顧問先の社長からこんな言葉をいただきました。「うちは青色申告ちゃんとやってますから、控除もバッチリですよ」と。
念のため申告書を確認してみると、控除額の欄には「100,000円」と書いてありました。本来なら65万円取れるはずが、10万円にとどまっていたのです。社長は全く気づいていませんでした。
実はこういったケース、決して珍しくありません。
青色申告には「3つのランク」がある
「青色申告をしている」といっても、控除額には3つの段階があります。
10万円控除は、簡易的な単式簿記で帳簿をつけている場合。家計簿に近いシンプルな記録でもOKですが、控除額は最低ランクです。
55万円控除は、複式簿記で帳簿をつけていても、申告書を紙や窓口で提出している場合。手間はかかっているのに、10万円との差は45万円あります。
65万円控除が最大ランクで、複式簿記での記帳に加えて、e-Taxによる電子申告まで行った場合にのみ適用されます。
この3段階を知らずに「青色申告=節税完了」と思い込んでいる社長が、想像以上に多いのです。
取り損ねると年間いくらの損になるか
所得税と住民税を合わせた実効税率が30%の社長の場合、65万円控除をフルに使えば年間の節税効果は約19.5万円です。
ところが10万円控除にとどまっていると、差額の55万円分がそのまま課税対象に残ります。税率30%で計算すると、年間16.5万円を毎年捨てていることになります。
10年続ければ165万円超。20年なら330万円を超える計算です。
「青色申告しているから大丈夫」という安心感が、実は毎年16万円以上のコストになっている——そう考えると、確認せずにいるのはもったいない話です。
65万円控除に必要な2つの条件
条件はシンプルです。
条件①:複式簿記での記帳 貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)が作成できる帳簿が必要です。freee・マネーフォワード・弥生会計などの会計ソフトを使えば、経理の専門知識がなくても対応できます。
条件②:e-Taxによる電子申告 国税庁のe-Taxシステムを使って、オンラインで申告書を提出することが必須です。どれだけ丁寧に記帳していても、郵送や窓口での紙提出では55万円止まりになります。
逆にいえば、この2つを満たすだけで毎年65万円の控除が確実に取れます。会計ソフトで記帳してe-Taxで提出するだけなので、一度仕組みを整えてしまえば翌年以降も継続できます。
「税理士に任せているから大丈夫」も要注意
気をつけたいのは、税理士に申告を依頼しているケースです。
税理士が関与していれば65万円控除になっているはず、と思いがちですが、引き継ぎのタイミングで前任者のやり方が踏襲されてしまうことがあります。前の担当が10万円控除で申告していて、新しい税理士もそのまま続けている——誰も「見直しましょう」と言い出さないうちに何年も経過していた、というのは実際によくある話です。
今すぐ申告書で確認する方法
直近の確定申告書(第一表)を手元に出してみてください。「青色申告特別控除額」の欄に何円と書いてあるか、確認するだけです。
- 650,000円:問題ありません、フルに取れています
- 550,000円:e-Taxへの切り替えだけで来年から65万円に上がります
- 100,000円:複式簿記への移行と電子申告、両方の見直しが必要です
100,000円だった方は、今期の申告から対応する価値が十分あります。適切に対応すれば、来年の申告から確実に差が出ます。
申告書の控除額をまだ確認したことがない方は、ぜひ一度チェックしてみてください。数字一つ確認するだけで、毎年の節税額が大きく変わるかもしれません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。