先日、ある製造業の社長からこんな相談を受けました。「財産は自宅と預金を合わせて7000万円くらい。相続税なんてうちには関係ない話だと思っていた」と。

試算してみると、奥様と子ども2人の計3人が相続人であれば、十分に課税対象になる金額でした。「えっ、7000万円でも税金がかかるんですか?」と、社長は絶句していました。

この社長が基準にしていたのは、10年以上前の知識でした。実は2015年の法改正で、相続税の計算ルールが大きく変わっているんです。

2015年の改正で何が変わったか

相続税には「基礎控除」という仕組みがあります。財産の総額がこの控除額以下であれば、相続税はゼロ。だから「自分の財産なんてたかが知れてるし、相続税は関係ない」と思っている方が多いんです。

ところが2015年1月に施行された改正で、この基礎控除が約60%も削減されました。

改正前の計算式は「5000万円 + 1000万円 × 相続人の数」でした。これが改正後は「3000万円 + 600万円 × 相続人の数」に変わっています。

相続人が3人の場合で比べると、改正前は8000万円あった控除が、今は4800万円。差額は3200万円です。控除額が一気に3200万円も消えてしまったわけです。

「財産7000万円」でも相続税が発生する現実

冒頭の社長のケースを計算してみます。財産が7000万円で、相続人が3人。今の基礎控除は4800万円なので、課税対象になる金額は2200万円です。

この2200万円に相続税が課されます。税率や各種控除の組み合わせで最終的な税額は変わりますが、数百万円規模の負担になることは十分あります。

改正前なら?基礎控除が8000万円あったので、7000万円の財産は非課税。「0円」だったものが数百万円になる。これが2015年改正の実態です。

「自分には関係ない」という感覚が10年以上前に形成されたままの方は、今すぐ見直しが必要です。

都市部の不動産オーナーはとくに注意

特に気をつけてほしいのが、都市部に自宅や収益不動産を持つ方です。

東京・大阪などの主要都市では土地の評価額が高くなりがちで、「自宅しかない、現金はそんなに持っていない」という方でも、土地の評価額だけで基礎控除を超えるケースがあります。

しかも恐いのは、相続が発生したとき手元に現金が足りないことです。相続税の申告・納付は原則として相続開始から10か月以内。現金が不足すれば、住み慣れた自宅を売らなければならない事態にもなりかねません。

財産に占める不動産の割合が高い方こそ、早めに専門家へ相談しておく必要があります。

対策には「時間」が必要

相続税は「事前に手を打てば、かなり抑えられる」税金です。代表的な方法として、年間110万円の基礎控除を使った生前贈与、生命保険の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)の活用、自宅に使える小規模宅地等の特例の確認などがあります。

ただし、これらに共通するのは「時間が必要」という点です。

生前贈与は年110万円ずつコツコツ移転するため、効果が出るまでに数年〜十数年かかります。また、相続直前の贈与は「持ち戻し」のルールで無効になることもあります。特例の適用には居住実態や事業実態が求められるため、急に整えようとしても認められないケースもあります。

だからこそ、対策は早いほど選択肢が広がります。

「うちには関係ない」ではなく、一度試算してみる

相続税の申告が必要な方の割合は、改正前は約4〜5%でした。改正後は約8〜9%に倍増しています。100人中8〜9人が課税対象という計算で、もはや「一部の富裕層だけの話」ではありません。

まず自分のケースに当てはめてみることをおすすめします。財産の総額を概算して、「3000万円 + 600万円 × 相続人の数」で基礎控除を計算する。それだけで、対策が必要かどうかの見当がつきます。

「なんとなく大丈夫だろう」という感覚を持ち続けていると、いざというときに数百万〜数千万円の税負担が突然のしかかることになります。今期中に一度、試算だけでもしておくことを強くおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。