先日、年商2,800万円のITコンサルタントから相談を受けました。「利益が出るようになったのに、確定申告のたびに虚しくなる」という言葉が印象的でした。

計算してみると、課税所得は約1,000万円。所得税と住民税を合わせた実効税率は50%近くに達していました。年間500万円近くが税金に消えている計算です。

頑張るほど税金が増える構造

個人事業主の所得税は「累進課税」です。稼げば稼ぐほど税率が上がる仕組みで、課税所得が700万円を超えると所得税率は23%、1,800万円を超えると40%になります。住民税10%を加えると、利益1,000万円を超えたあたりから実質的な税負担は50%近くに達します。

つまり、100万円稼いでも手元に残るのは50万円以下。これが「頑張るほど割に合わない」と感じる正体です。最高税率の55%になると、半分以上が税金に消えていく計算になります。

法人化すると何が変わるのか

法人の場合、中小企業の法人税実効税率は概ね23〜25%程度です。この数字だけ見ても、個人の最高税率55%との差は歴然としています。

ただ、法人化の本当の恩恵は税率の差だけではありません。「給与所得控除」が使えるようになることが、もう一つの大きなポイントです。

法人化するとあなた自身が会社から役員報酬を受け取る形になります。この報酬には給与所得控除が適用され、年収1,000万円超でも195万円が経費として認められます。個人事業主には一切ない控除です。この二重の効果が、節税額を大きく引き上げます。

年商3,000万円なら年200万節税も現実的

具体的な数字で見てみましょう。年商3,000万円、経費1,800万円で利益1,200万円の個人事業主がいるとします。

個人事業主のまま継続した場合、課税所得1,200万円に対する所得税・住民税は約550万円(実効税率約46%)になります。

法人化して役員報酬を月80万円(年960万円)に設定し、残り240万円を法人内に留保する設計にすると——個人の給与所得税・住民税が約180万円、法人税が約55万円で合計約235万円です。

差額は550万円 − 235万円=約315万円の節税。実際には個別条件が絡むため一概には言えませんが、年200万円以上の節税効果が出るケースは珍しくありません。

法人化のコスト、正直に言います

ただし、法人化は節税の魔法ではありません。必ず考慮すべきコストがあります。

最も大きいのが社会保険料の増加です。法人の役員は健康保険・厚生年金への加入が義務付けられており、国民健康保険・国民年金より保険料が増えることが多く、その差額が年間数十万円になるケースもあります。節税効果と相殺されてしまう部分があることは、正直に理解しておく必要があります。

そのほか、法人設立費用として約20〜25万円、税理士への顧問料も個人事業より高くなるのが一般的です。これらを差し引いてもなお、年商2,000万円を超えてくると法人化のメリットが上回るケースが多くなります。

タイミングを間違えると数百万の損

「課税所得が800万〜1,000万円を超えたとき」が法人化の一般的な目安とされています。このラインを超えると個人の税率が急激に上がり、法人化の恩恵が大きくなるからです。

ただし業種・家族構成・役員報酬の設計・社会保険の影響など、個別事情で結論は変わります。「なんとなく儲かってきたから法人化」ではなく、数字をシミュレーションした上で判断するのが重要です。

法人化のタイミングを1年間違えるだけで、数百万円の差が出ることもあります。今の確定申告の税額を見て「高いな」と感じているなら、今期の利益が固まってくる秋口に税理士へ相談するのが一番コストパフォーマンスの良い動き方です。手を打つなら、決算が終わってからではなく、終わる前に動くのがポイントです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。