先日、ある建設会社の社長からこんな相談を受けました。
「5月になると自動車税の通知書が届くんだけど、ずっと個人口座から払い続けているんだよね。これって経費にできないのかな?」
その社長、年商2億円を超える会社を10年以上経営しているのに、自動車税をずっと個人負担していたんです。聞けば「なんとなく個人名義の車だから、自分で払うものだと思ってた」とのこと。
こういう社長、実はとても多いんです。
法人名義にするだけで、ルールが変わる
結論からお伝えします。車を法人名義にすれば、自動車税は全額損金算入(経費計上)できます。
理由はシンプルです。法人が所有する資産にかかる税金は、事業活動に付随するコストとして認められます。個人名義で払っている限りは「個人の支出」ですが、法人名義に切り替えた瞬間から「会社の経費」になる。
同じ車で、同じ自動車税を払っているのに、名義が違うだけで経費になるかどうかが変わるわけです。これが節税の基本的な考え方の一つです。
自動車税だけじゃない、まとめて経費にできる
普通乗用車の自動車税は、排気量によって年間3万〜5万円台が中心です。2,000cc以下なら年間3万6,000円、2,500cc以下なら4万3,500円といった水準で、一見それほど大きな金額には見えないかもしれません。
ですが、法人名義にすることで節税できるのは自動車税だけではありません。
- 自動車保険(任意保険・自賠責保険):年間10〜20万円程度
- ガソリン代:月に数万円、年間で30〜50万円になることも
- 駐車場代:月額1〜5万円(地域によって差があります)
- 車検・修繕費:数万〜十数万円/回
これらをトータルすると、一台の社用車にかかるコストは年間50〜100万円を超えることも珍しくありません。そのすべてが経費として認められるわけですから、節税効果はかなり大きくなります。
先ほどの建設会社の社長も、合計すると「知らないだけで毎年60〜70万円の節税チャンスを見逃していた」という計算になりました。
私的利用が混ざるなら「按分」が必要
ただし、一つ注意点があります。
法人名義の社用車を、家族の買い物や週末の旅行など私的な場面でも使っている場合は、事業使用割合に応じて按分する必要があります。この場合、全額経費にはできません。
たとえば「平日は毎日業務で使い、土日は家族で使う」というパターンなら、5日÷7日=約71%が事業使用分として経費計上できる計算です。この割合は、走行距離のログや業務日報などで合理的な根拠を残しておくと、税務調査でも安心です。
「面倒だから完全に業務専用にしてしまおう」と割り切る社長もいます。プライベートはもう一台の個人名義の車を使い、法人名義の車は業務のみに徹するスタイルです。これが一番シンプルで、説明もしやすい方法です。
今から動いても、まだ間に合う
5月に届く自動車税の通知書は、節税を見直す絶好のきっかけでもあります。
法人名義への切り替えは、陸運局での登録変更手続きが必要ですが、税理士と一緒に進めれば難しくありません。今乗っている個人名義の車を法人に売却する形で名義変更するケースが多く、このときの売却価格の設定(市場価格に即した金額が基本です)も、税理士に相談しながら決めるのが安全です。
新しく購入するなら、最初から法人名義で契約すれば手続きはシンプルです。購入代金も減価償却費として複数年にわたって経費計上できるので、さらに節税の幅が広がります。
今年の5月の通知書をすでに個人口座から払ってしまっていたとしても、今から名義変更を進めれば来年以降の節税は確実に取れます。動き出すのに遅すぎることはありません。
自動車税の通知書が届いたとき、「これ、経費にできないのかな」と一瞬でも思ったなら、それが見直しのサインです。まずは顧問税理士に「車の名義変更と経費化」について相談してみてください。シンプルな一手で、毎年の節税効果が着実に積み上がっていきます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。