先日、フリーランスのコンサルタントをしている知人から、こんな連絡が来ました。
「税金が重くて、毎年確定申告のたびに胃が痛い。もう少しなんとかならないのかな」
年収は800万円ほど。仕事の成果は出ているのに、手元に残るお金がなかなか増えない、と悩んでいました。
実は、この悩みの根っこには「個人事業主のまま稼ぎ続けること」の構造的な問題があります。
稼げば稼ぐほど税率が跳ね上がる
個人事業主の所得税は「超過累進課税」です。所得が上がるほど税率が段階的に高くなる仕組みで、課税所得が900万円を超えると所得税だけで33%。そこに住民税の10%が加わると、実質的な税負担は43%に達します。
さらに年収が増えて所得税率が45%の最高税率に達すると、住民税と合わせた税負担は最大55%。稼いだお金の半分以上が税金に消えていく計算です。
この話をすると「そんなに払っているの?」と驚く方が多いのですが、個人事業主として規模が拡大するほど、構造的にこの問題は深刻になります。
法人化すると何が変わるのか
法人化したとき、最も大きく変わるのは「税率の上限」です。
法人税の実効税率は規模にもよりますが、おおよそ**23〜34%**の範囲に収まります。個人の最大55%と比べると、その差は歴然です。
さらに、法人から自分に支払う「役員報酬」には給与所得控除が適用されます。給与所得控除は、給与収入に対して一定額を自動的に経費として引いてくれる制度です。個人事業主のままでは使えないこの控除が、法人化することで活用できるようになります。
年収800万円の場合、給与所得控除だけで190万円以上の控除が加わります。これが課税所得を大きく圧縮してくれます。
家族への給与で所得を「分散」する
法人化のメリットはもう一つあります。配偶者や家族を従業員として雇い、給与を支払うことで所得を分散できる点です。
個人事業主でも青色申告であれば「専従者給与」を払えますが、配偶者に年収103万円を超える金額を払うとなると、税務署のチェックが厳しくなります。法人であれば、実際の業務に見合った適正給与を支払うことで、合法的に所得分散が可能です。
例えば、オーナー社長の役員報酬を800万円から600万円に下げ、配偶者に200万円の給与を払うとします。800万円に課される高い税率が、600万円と200万円に分散されることで、世帯全体の税負担が大きく下がります。
こうした複数の仕組みを組み合わせると、年間100〜300万円の節税が現実的な数字として見えてきます。
法人化を検討し始めるライン
一般的に言われているのは、年収700万円が一つの目安です。それ以下であれば、法人設立・維持のコスト(登記費用、税理士顧問料、社会保険料の事業主負担など)が節税額を上回ってしまうケースもあります。
700万円を超えているなら、法人化のシミュレーションをしてみる価値は十分あります。特に、毎年の税負担感が「重い」と感じているなら、それは見直しのサインです。
もちろん、節税額は売上構成・家族構成・役員報酬の設計によって大きく変わります。「自分の場合はいくら節税できるか」は、個別に試算しないと正確な数字は出てきません。
個人事業主のまま突き進むか、法人化に踏み切るか。その判断を今期中に一度、税理士に相談してみることをおすすめします。シミュレーションだけなら、多くの税理士が初回無料で対応してくれますよ。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。