先日、フリーランスのコンサルタントの方からこんな相談がありました。

「今期、売上が一気に伸びて年収が1,000万円を超えそうなんです。法人化したほうがいいですか?」

その一言を聞いた瞬間、「もうそのタイミングが来ていますよ」とお伝えしました。実は、このタイミングを見逃している個人事業主の方が、思いのほか多いんです。

個人事業主の税負担、正確に把握していますか?

所得税は累進課税なので、稼げば稼ぐほど税率が上がります。課税所得が695万円を超えると23%、900万円を超えると33%になります。そこに住民税の10%が乗っかるので、税負担は実に40%を超えてくるんです。

年収1,000万円でも、経費や各種控除を差し引いた課税所得が700〜800万円台になることは珍しくありません。稼いだお金の4割以上が税金として出ていく計算です。

「そんなに?」と感じた方、ぜひ一度、自分の課税所得を確認してみてください。意外と把握していない方が多いんです。

法人化で何が変わるのか

法人化の最大のメリットは、税率の低さです。資本金1億円以下の中小企業であれば、所得800万円以下の部分には軽減税率が適用され、法人住民税や法人事業税も含めた実効税率が約22%程度に抑えられるケースがあります。

個人の40%超と法人の22%程度。この差は、利益が増えるほど広がっていきます。

さらに、法人化すると自分自身に役員報酬を支払えるようになります。役員報酬には「給与所得控除」が使えるので、ここでも節税の余地が生まれます。給与所得控除は収入に応じて最大195万円まで引けますから、これも無視できません。

見落としがちな法人化のコスト

「じゃあすぐ法人化すればいい」と思うかもしれませんが、少し立ち止まってください。法人化にはコストと手間がセットでついてきます。

設立費用だけで、株式会社なら登録免許税や定款認証費用などで20〜30万円程度かかります。毎年の決算申告も個人と比べて複雑になるため、税理士への報酬も増えることが多いです。

特に見落とされがちなのが社会保険料です。個人事業主は国民健康保険ですが、法人化すると健康保険・厚生年金への加入義務が生じます。会社負担分もあわせると、年間数十万円単位で増えることがあります。

節税できた分がそっくりコスト増で消えてしまっては元も子もありません。

「年収1,000万円」が一つの目安になる理由

個人事業のまま課税所得が900万円を超えると、所得税率が33%の水域に入ります。住民税10%を合わせると43%超です。一方、法人化して所得800万円以下に抑えれば実効税率22%程度。この差が法人化コストを上回るラインが、おおよそ年収1,000万円前後というわけです。

もちろん、業種・経費構造・家族構成・事業の将来性によっても変わります。「1,000万円を超えたら自動的に法人化」ではなく、「真剣にシミュレーションするタイミング」として捉えてください。

先延ばしにするほど損をする

法人化を迷っている間にも、毎年の税負担の差額はそのまま機会損失になっていきます。仮に年間100万円の節税効果があるなら、3年先延ばしにすれば300万円の差です。

設立手続きや税理士との相談に少し時間がかかるとしても、検討を始めるのは早ければ早いほど有利です。まずは今の課税所得を確認して、「そろそろかな」と感じたら税理士にシミュレーションを依頼してみてください。具体的な数字が出るだけで、判断がぐっとしやすくなりますよ。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。