先日、年商3億円の飲食チェーンを経営する社長から、こんな電話がありました。「先生、急に税務署から連絡が来て、秋に調査に入りたいって言われたんですが……」。受話器越しにも、声の動揺が伝わってきました。

「特にやましいことはない」とおっしゃる社長でしたが、問題はそこではありません。税務署は調査先をランダムに選んでいるわけではなく、実は明確な選定基準があります。狙われやすい会社には、共通した「3つの特徴」があるのです。順番に見ていきましょう。

3位:現金売上が中心の業種

飲食店、建設業、美容室、クリーニング店など、現金取引が多い業種は、調査の入口になりやすいと言われています。

理由はシンプルで、カード決済や銀行振込と違い、現金は後から履歴をたどりにくいからです。調査官の目線では「売上の一部を帳簿から意図的に外している可能性がある業種」とみなされ、重点チェックの対象になります。

対策として大切なのは、日々の売上証跡をきちんと残しておくことです。レジデータと実際の入出金の突合せ、釣り銭の管理記録、領収書の保存など、「ちゃんとやっている」という事実を第三者に証明できる状態を常に保ちましょう。

2位:同業種に比べて利益率が極端に低い会社

あまり知られていませんが、国税局は業種ごとの平均利益率データを保有しています。そして、同業他社と比べて利益率が大幅に外れている会社は、自動的にマークされる仕組みになっています。

たとえば、業界平均の利益率が10%のところ、あなたの会社が2〜3%だとしたら?正当な理由があるとわかっているのは自分だけで、数字だけを見た税務署には「利益を何かで圧縮しているのでは?」と映ります。

ここで重要なのは、利益率が低い「理由」を書類で説明できるかどうかです。新規設備への先行投資、特殊な仕入構造、業界特有の固定費構造など、根拠となる証拠を残しておくことが、調査が来たときの防波堤になります。

1位:前年から申告数字が急変動した会社

税務調査の選定において、最も強い根拠となるのがこれです。

前の期と比べて、売上が急激に落ちたり、役員報酬や交際費が大幅に増えたりした場合、「利益を意図的に操作した」という疑念を招きます。特に役員報酬と交際費は「経費の調整弁」として使われやすいため、調査官が真っ先に着目するポイントです。

もちろん、コロナの影響、事業の縮小、新規投資など正当な背景がある場合もあります。ただし、それを「外部の目」に説明できる証拠があるかどうかが問われます。「自分たちはちゃんとやっている」という主観は、調査の場では何の防御にもなりません。

ちなみに、追徴課税の平均額は約500万円とされています。悪質と判断された場合は重加算税(35〜40%)が加算されるため、最終的に1,000万円近い金額になることも珍しくありません。

「説明できる状態」を作ることが最大の防御

税務調査の通知は突然やってきます。来てから慌てても、遡って証拠を作ることはできません。

日頃から「調査が来ても説明できる状態」を維持することが、最大の防御策です。帳簿の整備はもちろん、前年比で数字が大きく動いた期は、その背景をメモ一枚残しておくだけで、万一のときの対応が格段に変わります。

もし今期の申告数字に「心当たり」があるなら、決算前に顧問税理士と一度じっくりシミュレーションしておくことを強くお勧めします。追徴課税のリスクは、準備次第でかなり下げられます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。