先日、個人でコンサルティング業を営む40代の社長から相談を受けました。「税金がきつくて限界です」と開口一番。話を聞けば、年間の課税所得は700万円ほど、売上は1,100万円近くまで伸びていて、経理は奥さんに手伝ってもらっているといいます。
この方、ある3つの条件をすべて満たしていました。法人化の試算をしてみると、年間100万円以上の節税が十分に見えてくるケースでした。「もっと早く相談すればよかった」と、その社長はおっしゃっていました。
個人事業主を追い詰める「税率の壁」
日本の所得税は累進課税です。課税所得が900万円を超えると所得税率は33%になり、住民税10%を合わせると実質43%。1,800万円超なら所得税率40%、住民税と合計すれば50%を超えます。
一方、中小企業の法人実効税率(法人税・地方法人税・住民税・事業税の合計)は、最大でも約34%程度です。
課税所得1,000万円で比較すると、個人と法人の税負担の差は年間100万円を超えることも珍しくありません。この差が毎年積み重なると思うと、動かずにいるのが惜しくなりませんか。
法人化を急ぐべき3条件
すべての個人事業主が今すぐ法人化すべきとは言いません。ただ、以下の3条件が重なったとき、決断を急ぐ価値があります。
① 課税所得が年500万円を超えている
500万円が一つの分岐点です。ここを超えてくると、個人と法人の税率差が目に見えて大きくなります。700万円、1,000万円と増えるほど、差額もさらに広がっていきます。
「もっと早く動けばよかった」と後悔する社長を何人も見てきました。利益が残り始めた段階で、一度法人化の試算をしてみる価値があります。
② 売上が1,000万円に近い
消費税の観点からも、タイミングが命です。個人事業の課税売上が1,000万円を超えると、翌々年から消費税の納税義務が発生します。このタイミングで新しく法人を設立すると、法人としての消費税免税期間(最大2年間)を改めてスタートできます。
売上が900万円台に差し掛かっているなら、法人設立を先送りにするたびに免税の恩恵を失うリスクが高まっています。消費税が年間100万円規模になることもある以上、これは見逃せません。
③ 家族を役員や従業員にできる
意外と見落とされがちなのが、この条件です。奥さんや親族に法人から役員報酬・給与を支払うと、法人側の経費として落とせます。さらに受け取った家族側にも給与所得控除(最低55万円)が適用されます。
仮に1人で年700万円の所得を持つより、夫婦で350万円ずつに分散するほうが、税率が下がって手取りが増えます。これが所得分散の効果です。実際に業務に関わっていることが前提ですが、実態が伴っていれば強力な節税手段になります。
「いつかやろう」が一番コストが高い
法人化の手続きが面倒、という気持ちはよくわかります。登記費用や社会保険の手続き、会計コストなど、法人には一定のランニングコストがかかります。年間で見ると、数十万円規模になることもあります。
ただ、節税効果がそれを大きく上回るなら、答えは明確です。3条件が揃っているのに動かないと、1年先延ばしにするたびに「取れたはずの節税額」を静かに失い続けることになります。「今期の決算が終わってから」と先送りしているうちに、また1年分の差が積み上がります。
まず試算だけ依頼してみる
法人化の是非は、業種・家族構成・将来の売上見通しによっても変わります。「自分に当てはまるかわからない」という方こそ、税理士に試算を依頼してみてください。比較シートを1枚作るだけで、判断がずっとクリアになります。
3条件のうち1つでも心当たりがあるなら、「今期中に試算だけでも」。その一歩が、毎年の税負担を大きく変えるきっかけになります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。