「うちはまだ個人事業主のままでいいですよね?」

先日、年商1,200万円ほどのWebデザイン事業を営んでいるフリーランスの方から、そう聞かれました。事業は順調で、最近は年間の課税所得が700〜800万円に達しているといいます。

「法人化って面倒そうだし、今のままで問題ないですよね?」

正直に言うと、そのままでいると数年後に後悔するかもしれません。今日はその理由をお話しします。

個人と法人、税率の差はどれだけ大きいか

日本の所得税は累進課税です。課税所得が上がれば上がるほど、税率も上がっていく仕組みになっています。

課税所得が700万円のケースを見てみましょう。個人事業主として申告した場合、所得税率は23%で、住民税10%と合わせると実質33%前後になります。ここまでなら「まあそんなものか」と感じるかもしれません。

ところが課税所得が900万円を超えた途端、所得税率は33%に跳ね上がります。住民税10%と合算すれば、税負担は43%超。手元に残るのは稼ぎの半分以下、ということになります。

一方、中小法人の実効税率はどうかというと、所得800万円以下の部分で約23〜25%です。個人との差は最大18ポイント以上。同じ売上を稼いでいるのに、これだけ手取りが変わってくるわけです。

課税所得500万円でも恩恵がある理由

「でも自分はまだ課税所得500万円くらい。法人化はまだ早いのでは?」

実はそうとも言い切れません。課税所得500万円の規模でも、法人化によって年間50〜90万円の節税効果が出るケースがあります。

仕組みを簡単に説明しましょう。法人にすると、代表者への役員報酬を経費として計上できます。個人事業主には認められていない「自分への給与」が、法人だと合法的にコストになるのです。

さらに、役員報酬には給与所得控除も適用されます。同じ金額を稼いでいても法人経由の方が所得の圧縮効果が高くなるため、課税所得500万円台でも法人化の恩恵を十分に受けられることが多いのです。

ただし法人化にはコストもある

節税効果だけを見て「すぐに法人化しよう」と飛びつくのは早計です。現実的なコストも理解しておく必要があります。

まず設立費用として、合同会社なら6〜10万円、株式会社なら20〜25万円程度かかります。それ以上に注意が必要なのが、社会保険料の増加です。

個人事業主のうちは国民健康保険と国民年金で済んでいたものが、法人にすると厚生年金と協会けんぽへの加入が義務になります。この保険料増加分が節税効果を上回るケースも実際にあるため、「税率が低いから必ず得」とはなりません。

また、法人は赤字でも毎年7万円の均等割(法人住民税)がかかります。売上に波のある方は、このあたりもシミュレーションに入れておきましょう。

いつ動けばいいのか

目安としては「課税所得が500〜600万円を継続的に超えてきたとき」が一つのサインです。

ただし、法人化の効果は業種・役員報酬の設定・社会保険料の変化など、個人の状況によって大きく変わります。「年商1,000万円になったら」「消費税の課税事業者になったから」という基準で動く方も多いですが、それが最適なタイミングとは限りません。

一度、現在の数字を持って税理士に相談してみてください。「法人化した場合とそのままの場合のシミュレーション」を出してもらえれば、判断に必要な情報がそろいます。


今の課税所得が500万円を超えてきたと感じているなら、今期の決算前に一度動いてみてください。法人化は設立してからではなく、事業年度の開始タイミングに合わせて準備を進めた方が節税効果が最大化されます。来年の今頃に「もっと早く動けばよかった」とならないために、早めの一手が大切です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。