先日、フリーランスでコンサルをしている方からこんな相談を受けました。「売上が伸びてきて、今期は利益が500万円を超えそうなんですよね。でも税金が急に増えた気がして……」
その方、個人事業主のまま数年間頑張ってきたのですが、利益が一定水準を超えたあたりから、確定申告のたびに支払う税額が「増えすぎじゃないか」と感じるようになってきたといいます。
これ、実はとても多いケースです。
個人事業主、利益500万円の税負担の現実
個人事業主として利益500万円を稼いだ場合、所得税と住民税を合わせると、実質的な税率は30%を超えてきます。単純計算で、年間150万円以上が税負担になるイメージです。
手取りで350万円ほどになる計算ですが、「稼いだ金額の3割以上が税金で消えていく」というのは、実感として重くのしかかります。
そしてここに、個人事業税(業種によって3〜5%)も加わってくることを忘れてはいけません。利益が伸びるほど、税負担の増え方が加速するのが個人事業主の構造的な課題です。
法人化すると、何が変わるのか
結論から言うと、同じ利益500万円でも、法人のほうが税率を大幅に下げられます。所得800万円以下の法人実効税率はおよそ22%前後。個人事業主との差は、利益500万円ベースで年40万円以上になる計算です。
個人なら150万円以上かかっていた税負担が、法人化することで110万円程度に収まる可能性があります。この差を10年積み上げると、400万円以上の違いになります。
「たかが40万円」と感じる方もいるかもしれませんが、毎年40万円の手残りが増えるということは、それを設備投資や人件費に回せるということ。事業成長のスピードが変わってきます。
法人化の損益分岐点はどこか
よく聞かれるのが「年商いくらから法人化すべきか」という問いです。ここで大事なのは、売上ではなく利益ベースで考えることです。
一般的な目安として、利益が400〜500万円を超えてきたあたりが法人化の検討ラインと言われています。この水準を超えると、個人事業主と法人の税率差が広がり、節税メリットが設立・運営コストを上回ってくる計算になります。
逆に利益が300万円以下の段階で法人化しても、固定コストが増えるだけで節税効果が薄いケースも多いです。タイミングを見誤ると、逆に手残りが減ることもあります。
ただし「法人化すれば全部解決」ではない
法人化には当然コストも伴います。設立費用として、株式会社なら登録免許税などで20〜25万円程度、合同会社なら6〜10万円程度かかります。
さらに見落としがちなのが、社会保険料の変化です。個人事業主のときは国民健康保険と国民年金でしたが、法人化すると健康保険・厚生年金への加入が義務になります。会社負担分も含めると、月々の固定コストが増えるケースもあります。
税率の差だけを見て「法人化=お得」と決めつけるのは危険で、個人の状況によって損益分岐点はまったく変わります。
シミュレーションは必ず専門家に
法人化の判断で一番大事なのは「自分のケースではどうなるか」を数字で確認することです。業種・家族構成・役員報酬の設定・将来の利益見込みによって、節税効果はまったく違う数字になります。
税理士にシミュレーションを依頼すると、「法人化した場合の税負担」と「個人事業主のまま続けた場合の税負担」を比較した試算を作ってもらえます。多くの事務所では初回相談を無料で受け付けているので、まずは一度試算してもらうことをおすすめします。
利益が500万円に近づいてきた方は、ぜひ今期の決算が終わる前に動いてみてください。決算後に「やっぱり法人化しよう」と気づいても、その1年分の節税機会は戻ってきません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。