「売上は順調なのに、手元に残るお金が全然増えない気がする」

先日、フリーランスのコンサルタントとして10年以上活躍されている方からこんな相談を受けました。年商は1,500万円を超えているのに、なぜかお金が貯まらない。調べてみると、理由はすぐにわかりました。ずっと個人事業主のままだったんです。

個人事業主の税負担は「3重構造」になっている

個人事業主の税金は、所得税・住民税・事業税の3つが同時にかかってきます。所得税は累進課税なので、稼げば稼ぐほど税率が上がります。そこに住民税が一律10%乗り、さらに事業税が業種によって3〜5%追加されます。

課税所得が500万円を超えてくると、これらを合計した実効税率は30%台に突入します。年間の利益が800〜1,000万円規模になると、実効税率が35%を超えることも珍しくありません。

「稼いだつもりが、気づけば税金で半分近く持っていかれていた」という感覚は、まったく大げさではないんです。

法人には「800万円の壁」という優遇がある

一方、法人税には中小企業向けの軽減税率が適用されます。年間利益が800万円以下であれば、実効税率は約22〜23%に収まります。

個人事業主の35%超と、法人の22%。この差は13ポイント以上あります。仮に年間利益が700万円だとすると、実効税率の差だけで計算すると約90万円の差になります。

「たった数%の違いでしょ」と思うかもしれませんが、これが毎年続くと5年で450万円、10年で900万円の差になります。数字で見ると、さすがに無視できないはずです。

法人だけに認められる「給与所得控除」という武器

法人化するとさらに大きなメリットがあります。それが給与所得控除です。

法人の場合、社長は自分の会社から「役員報酬」を受け取る形になります。この役員報酬には、給与所得控除が自動的に適用されます。年収600万円の役員報酬を設定した場合、164万円が控除として差し引かれます。つまり最初から164万円分は課税されないわけです。

個人事業主にはこの仕組みがありません。稼いだ利益がそのまま課税所得になります。同じ600万円の収入でも、スタート地点が164万円違う——この差が積み重なって、気づけば年間100万円超の節税機会を毎年見逃していることになります。

老後の資産形成にも「退職金優遇」が使える

見落とされがちですが、退職金の扱いも個人と法人では大きく異なります。

法人であれば、将来社長が退職する際に退職金を支払う形を取れます。退職金には退職所得控除という大きな控除があり、さらに課税対象額が1/2になる優遇措置があります。勤続年数20年で控除額は800万円、30年なら1,500万円です。

仮に退職金を3,000万円受け取るケースでも、実際に税金がかかる額はかなり限定されます。現役時代の給与所得と比べると、税負担の差は歴然です。個人事業主のまま廃業しようとすると、こうした恩恵はほぼ使えません。

いつ法人化すればいいのか

法人化には設立費用や会計の手間も増えますが、目安として年間利益が500万円を超えたあたりから検討する価値が出てきます。1,000万円を超えているなら、すでに「損し続けている期間」が続いている可能性が高いです。

「面倒くさそう」「まだ早い気がする」と先延ばしにするほど、取り戻せない差が積み上がっていきます。今期の決算を迎える前に、税理士と一度「法人化シミュレーション」をしてみることを強くおすすめします。具体的な数字で比較すると、ほとんどの方が予想以上の差に驚かれます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。