先日、創業18年の製造業の社長からこんな相談を受けました。
「取引先との飲食はそれなりに多いんですが、交際費って確か上限があるんでしたっけ?どうせ全部は落とせないんですよね」
実はこれ、半分正解で半分間違いです。上限があること自体は事実なのですが、2024年4月の税制改正で使い方が大きく変わりました。まだ旧ルールのイメージのまま「どうせ全部は落とせない」と思っているなら、毎年かなりの金額を損しているかもしれません。
中小企業には「年800万円まで全額OK」という特例がある
まず基本から確認しましょう。法人が接待交際費として計上できる金額には、原則として上限があります。大企業(資本金1億円超)は交際費の50%しか損金算入できませんが、中小企業(資本金1億円以下)には別のルールが適用されます。
年間800万円まで、全額損金算入が認められているのです。
年商2億円の会社が800万円の交際費を計上すれば、実効税率30%として単純計算で約240万円の節税になります。「800万円も使いこなせない」という声もよく聞きますが、問題は使える量ではなく、この枠の存在を活かせているかどうかです。
2024年4月の改正で「1万円ルール」が登場した
ここが今回の肝心なポイントです。
2024年4月より、1人あたり1万円以下の飲食費は交際費の対象外になりました。旧制度では5,000円以下が基準でしたが、これが倍の1万円に引き上げられたのです。
具体的に言うと、取引先2人と9,000円のランチをした場合、その飲食代は交際費にカウントされません。交際費カウント外ということは、800万円の枠を消費しないということ。別の費用として損金算入できる可能性が広がったわけです。
組み合わせると実質的な計上枠がぐっと広がる
実務的な話をしましょう。
月に取引先と食事する回数が多い社長なら、「1万円以下の飲食」を意識的に活用することで、800万円の枠をその分温存できます。たとえば月15回、1人あたり8,000円の食事をしているとします。年間180回分の飲食費が交際費に計上されなければ、その分800万円の枠が丸ごと残ります。
結果として「1万円以下の飲食(交際費外)+800万円枠の接待交際費」を組み合わせることで、損金算入できる接待関連費用の総額が実質的に大幅に増えます。どちらか片方だけを意識している社長は、今すぐ両方の活用を検討すべきです。
税務調査で否認されないための3つの習慣
ただし、何でも経費になるわけではありません。特に以下の点は押さえておく必要があります。
- 同席者と目的を記録する: 「誰と・何の目的で」という記録がなければ、税務調査で否認されるリスクがあります
- 科目を正しく分ける: 1万円以下の飲食を「会議費」等で処理する場合、交際費と明確に区別できる状態にしておくこと
- 領収書は宛名入りで保管: 金額だけでなく店名・日付・人数がわかるレシートを保存する
この3点を習慣化しておくだけで、税務調査の際の対応が格段に楽になります。
800万円の枠は翌年に繰り越せない
もう一つ知っておいてほしいのは、年800万円の枠は使い切らなければそのまま消えるということです。今期使わなかった分は、翌期に上乗せされません。
「うちは交際費をそんなに使っていない」という社長ほど、一度棚卸しをしてみてください。取引先へのお中元・お歳暮、ゴルフ代、食事会、慶弔費など、ビジネス上の付き合いで使っているお金を整理すると、意外と計上できるものが出てきます。
2024年4月の改正ルールをまだ顧問税理士と確認できていないなら、次の打ち合わせで「1万円ルールの活用」を議題に上げてみることをおすすめします。知っているか知らないかだけで、毎年の手取りが変わってきます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。