先日、ある社長からこんな話を聞かせてもらいました。「税務調査に入られて、セミナー代が全部ダメって言われた。領収書もちゃんとあったのに」と。
総額で数十万円。全額否認されたそうです。
書籍やセミナー代は「研修費」や「図書費」として経費(損金)にできます。ただ、経費にするには「業務との関連性」を説明できることが前提です。領収書があるだけでは不十分で、税務署はそこを突いてきます。
今回は、よくある3つのNGパターンと、実際の対策をお伝えします。
NG① 趣味・教養目的のセミナー
「料理教室」「語学学校」「ヨガ」——これらを会社の経費にしているケースを、意外とよく見かけます。
「社長のストレス解消は会社に必要」「グローバル対応のために英語は必須」という理屈は通りません。業務の直接的な関連性が問われるので、たとえば「海外取引先との商談に使う英語」であれば説明できますが、「とりあえず英会話を習っています」では難しい。
自分が好きで通っているものを会社の経費にするのは、税務署に一番見透かされやすいパターンです。
NG② 家族の受講費を会社負担にする
配偶者や子どもが受けたセミナー・講座の費用を、会社が払っているケースも否認されやすいです。
「妻が経理を手伝っているので」という説明も、役員や従業員として実態があるかどうかが問われます。名前だけ役員で実際には何もしていない、という状態だと、受講費だけでなく役員報酬ごとひっくり返されるリスクがあります。
家族への支出は全般的に税務署の目が厳しい。それだけ覚えておいてください。
NG③ 領収書はあるけど参加記録がない(これが一番多い)
3つのなかで最も多く、そして最もモッタイナイパターンがこれです。
領収書はある。確かに参加した。でも何を学んで、業務にどう活かしたか——その記録が何もない。
税務署の担当者は「業務と関係あったんですか?」と聞いてきます。そのとき、口頭で「ありました」と言っても、証拠がなければ信じてもらえません。
対策はシンプルです。セミナーや研修に参加したら、A4用紙1枚でいいので「受講メモ」を残しておく。 日付・セミナー名・学んだ内容・業務への活用方法、この4つを箇条書きで書くだけで十分です。
たったこれだけで、税務署の心証は大きく変わります。「ちゃんと管理している会社だ」という印象を与えることが、調査の結果を左右するんです。
金額の上限は法律上ない。ただし……
研修費・図書費に法律上の上限はありません。年間100万円でも、業務との関連性が説明できれば経費にできます。
ただし、年間で数十万円を超えてくると、税務署が「内容を確認させてください」と言いやすくなるのは事実です。金額が大きければ大きいほど、記録の精度を上げておく必要があります。
特に決算前に一気に「駆け込みでセミナーを経費にしよう」とまとめて計上するのは危険です。タイミングと金額が重なると、それだけで疑念を持たれる材料になります。
今からできる対策は1つだけ
難しいことは何もありません。これからセミナーや研修に参加したら、その日のうちにメモを1枚書く習慣をつけるだけです。
ExcelでもGoogleドキュメントでも、手書きのノートでも構いません。「いつ・何を・なぜ参加して・何に活かすか」が書いてあれば、それが証拠になります。
過去の分については、記憶が残っているうちに遡って記録しておくことをおすすめします。税務調査は突然来ます。準備は「今期分」だけでは足りません。
書籍やセミナー代は、うまく活用すれば会社の成長と節税を同時に実現できる経費です。否認されるのは、内容の問題ではなく「記録がないこと」がほとんどです。少しの習慣で、大きなリスクを防げます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。