先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。「毎月20万円の家賃、ずっと自腹で払ってるんですけど、これって何とかなりませんか?」

そのときお伝えしたのが、社宅節税という方法です。うまく活用すれば、年間50万円以上の節税になることも珍しくありません。しかも、特別な投資や複雑な手続きは不要。仕組みさえ理解すれば、今期中に始められます。

家賃の85%が会社の経費になる理由

仕組みはシンプルです。

あなた個人と大家さんが結んでいる賃貸契約を、会社と大家さんの契約に切り替えます。そして会社が、あなた(社長)に社宅として貸し出す形にする。これだけです。

こうすることで、会社が支払う家賃は全額「損金」として計上できます。一方、社長が会社に払う額は「賃貸料相当額」と呼ばれる金額だけでOK。この自己負担がとても小さいのがポイントです。

月20万円の家賃なら、賃貸料相当額は2万〜3万円ほどに収まることがほとんどです。残りの17万〜18万円は会社の経費。年間に換算すると、法人税・所得税・社会保険料の節約効果を合わせて50万円を超えるケースも十分にあります。

賃貸料相当額の計算ルール

「10〜15%払えばいい」と聞くと簡単そうですが、実際の計算には国税庁が定めたルールがあります。固定資産税評価額・床面積・築年数を使って算出するもので、物件によって結果が変わります。

目安として、床面積132㎡以下の「小規模住宅」と、それを超える「一般住宅」で計算式が異なります。一般的な賃貸マンションであれば小規模住宅に該当することが多く、自己負担は家賃の10〜15%程度に収まります。

賃貸物件の場合、固定資産税評価額は大家さんか市区町村に確認が必要です。少し手間はかかりますが、この数字を正確に押さえておくことが節税の土台になります。

給与課税リスクを甘く見ないこと

ここで必ず押さえておきたい注意点があります。

賃貸料相当額を正しく計算・徴収しないと、税務署から「社長への給与」と見なされるリスクがあります。給与課税されると所得税と社会保険料の追加負担が発生し、節税どころか追徴課税を受ける可能性もあります。

「だいたい10%払えばいいでしょ」と勘で設定するのは危険です。固定資産税評価額をきちんと確認せず、根拠なく金額を決めると、税務調査で指摘を受けます。社宅節税は「やり方次第でアウト」になる制度でもあるので、設定は必ず顧問税理士に依頼して正確な金額を出してもらいましょう。

始めるときの手順

実際に社宅節税を導入する場合、おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 大家さんに「法人契約への切り替え」を相談する(拒否されるケースもあります)
  2. 固定資産税評価額を確認し、賃貸料相当額を計算する
  3. 会社と社長の間で「社宅貸与契約書」を締結する
  4. 毎月の役員報酬から賃貸料相当額を控除する

大家さんが法人契約を嫌がるケースもゼロではありませんが、交渉次第で認めてもらえることも多いです。これから新しく物件を借りる場合は、最初から法人名義で契約するとスムーズです。

今の家賃を「そのまま払い続ける」のは損です

自宅の家賃を個人で払い続けるのは、課税済みの手取りから払っているということです。同じ家に住みながら、契約の名義を変えるだけで年間50万円以上の差が生まれる——これを知っているかどうかで、10年間のキャッシュフローに500万円の違いが出てくることもあります。

まだ社宅節税を取り入れていないなら、今すぐ顧問税理士に「社宅にできますか?」と一言聞いてみてください。次の決算を迎える前に動いておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。