先日、年商3億円ほどの建設会社の社長から、こんな連絡が届きました。
「うちの経理、メールで届いた請求書をぜんぶ印刷してファイリングしてるんですけど、これって問題ありますよね?」
はっきり言います。2024年1月以降は、それ、アウトです。
PDFを印刷して保存する時代は終わった
2024年1月の法改正で、電子取引データを紙に印刷して保存することが完全に禁止されました。それまでは「猶予期間」があったので見逃されていましたが、今はもうその余地がありません。
ここでいう「電子取引」とは、メールに添付された請求書、クラウドサービスから発行された領収書、EDIシステムで受け取った注文書などが該当します。つまり、多くの会社が日常的にやり取りしているものがほぼ全部対象です。
「紙でもらったものは今まで通りでいい」と思っている社長は多いのですが、電子で受け取ったものは電子のまま保存しなければならない、これが今の法律です。
見落としがちな「検索要件」という壁
ここからが多くの社長が知らない部分です。
電子データで保存すればそれで終わり、ではありません。保存したデータが「すぐに検索できる状態」になっていることが義務付けられています。
具体的には、日付・金額・取引先の3項目で即座に検索できなければなりません。
たとえば「2024年10月に株式会社〇〇から受け取った請求書を出してください」と言われたとき、3秒以内に画面に出せますか?
フォルダに「2024年_請求書」とまとめて突っ込んでいるだけでは、税務調査で否認されるリスクがあります。ファイル名に日付と取引先を入れるだけでも対応できる部分はありますが、件数が多い会社ではそれだけでは追いつかないケースもあります。
「うちは中小企業だから関係ない」は通じない
電帳法の対象に売上規模の下限はありません。個人事業主も法人も、電子でやり取りしている取引がある時点で対応義務が生じます。
ただし、従業員数が少ない小規模事業者に向けた「簡易な対応」も認められています。具体的には、所轄の税務署に届け出ることで、検索要件の一部が緩和される場合があります。
自社の規模と取引フロー次第で取るべき対応が変わるため、「何が必要か」を把握することが最初のステップです。
まず自社の取引フローを棚卸しする
対策ツールを導入する前に、やるべきことがあります。
どのルートで電子データが届いているかを整理することです。
- メールで届く請求書はどのアドレスに来ているか
- クラウド会計ソフトや請求書サービスから自動取得しているデータはあるか
- 仕入先がFAXから電子に切り替わっていないか
この棚卸しをせずにツールを入れても、漏れが出ます。実際に「クラウドサービスは対応できたが、個人メールに届いている請求書が抜けていた」という話はよく聞きます。
ツール自体はマネーフォワードやfreeeなど、すでに使っている会計ソフトに機能が組み込まれているケースも多く、追加コストゼロで対応できる会社も少なくありません。まずは今使っているソフトの設定を確認するところから始めてみてください。
税務調査での実態
現時点では「初回調査は指導にとどまる」ケースが多いとも言われていますが、それに甘えるのは危険です。税務当局の運用は年々厳格化される傾向にあり、2〜3年後には「知りませんでした」が通らなくなる可能性が高い。
今のうちに仕組みを整えておくことが、将来のリスクを最小化する最善策です。
まだ電子取引データの保存フローを整備していないなら、今期中に一度、経理担当者と棚卸しの時間を取ることをおすすめします。仕組みを作るのに大きなコストはかかりません。かかるのは少しの時間と、正しい知識だけです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。