先日、従業員10名ほどの建設会社を経営する社長から、こんな相談を受けました。
「うちは毎月けっこう出張があるんですが、経費の処理がバラバラで…。もっとうまくやれる方法ってありますか?」
話を聞いてみると、交通費は領収書ベースで都度精算、宿泊費も実費、日当は出していない、という状態でした。これ、実はかなりもったいない。旅費規程をきちんと整備するだけで、経費化できる範囲がぐっと広がるんです。
旅費規程でカバーできる費用は思ったより多い
「旅費規程=日当」というイメージを持っている方が多いのですが、実際にカバーできる費用は5つあります。
まず交通費。電車・新幹線・飛行機・タクシーなど、移動にかかる費用は規程に盛り込めます。次に宿泊費。一泊いくらまで、という上限を設定して支給できます。そして多くの社長が目的にする日当。出張中の食事や諸雑費の補填として、非課税で支給できる手当です。
ここまでは「知ってる」という方も多いかもしれません。ただ、次の2つが意外と見落とされています。
出張先での通信費と手荷物の輸送費です。たとえば海外出張時のWi-Fiレンタル代や、機材・サンプルを宅配便で送った費用なども、規程に盛り込んでおけばスムーズに経費処理できます。これらを「なんとなく雑費で処理」していた会社には、整理する価値があります。
定額支給の仕組みが実は一番おいしい
旅費規程の中でも特に節税効果が高いのが、定額支給の仕組みです。
通常、交通費を精算するには領収書が必要です。でも規程に「○○円以内の交通費は定額支給」と定めておけば、毎回の領収書収集が不要になります。少額の交通費なら、実費ではなく規程上の金額を支給できるケースがあり、事務作業の負担が大幅に減ります。
社長自身の出張についても同様です。「新幹線はグリーン車利用可」「宿泊費は1泊15,000円まで」といった規程を設ければ、実態に見合った金額を法人から支給できます。役員報酬に上乗せすると所得税がかかりますが、旅費規程に基づいた旅費・日当は原則として非課税。これが旅費規程の最大のメリットです。
「規程があれば経費になる」は大きな誤解
ここで大事な注意点をひとつ。
旅費規程を作るだけで、自動的に経費が認められるわけではありません。税務調査でよく問題になるのが「出張の実態があるか」という点です。
出張命令書や出張報告書、宿泊ホテルの領収書、訪問先との打ち合わせメモなど、「本当に出張があった」ことを証明できる記録が必要です。規程だけ整備して実態が伴っていない場合、否認されるリスクがあります。これは社長自身の出張でも、従業員の出張でも同じです。
また、日当の金額が「社会通念上相当」でないと問題になることもあります。国内出張で1日5万円の日当、というのは明らかに過大で否認される可能性が高い。同規模・同業種の会社と比較して妥当な金額に設定することが重要です。
規程の整備は「今期中」がベスト
旅費規程は、作ってからでないと適用できません。過去に遡って「あの出張分も規程に基づいて支給したことにしよう」は通用しないので、導入するなら早いほうがいい。
特に出張の多い会社、社長自身が頻繁に移動する会社は、規程の整備で年間数十万円単位の節税につながることもあります。
作成にあたっては、国税庁が示している非課税限度額の考え方を踏まえながら、自社の出張実態に合った内容にカスタマイズすることがポイントです。ひな形をそのまま使うだけでは不十分なケースもあるので、顧問税理士と一緒に確認するのが安心です。
まだ旅費規程を整備していないなら、今期中に着手しておくことを強くおすすめします。一度作ってしまえば、毎年の経費処理がぐっとラクになりますよ。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。