先日、創業5期目の建設業の社長から「うちにも税務調査が来るらしいんですが、何を聞かれるか分からなくて眠れません」という相談を受けました。

実はこの手のご相談、驚くほど多いんです。そして面白いことに、税務調査で聞かれる内容には、業種を問わず明確な「傾向」があります。約6時間に及ぶ調査の大半は、たった3つの質問に集約されると言っても過言ではありません。

今日はその3つを、優先度の低い順にお話しします。

第3位:その経費、本当に事業のためですか

まず聞かれるのが、経費の使い道です。

「経費くらい普通に使っていますよ」という社長は多いのですが、調査官が見ているのは金額の大小ではありません。プライベートとの線引きが説明できるかどうかです。

例えば交際費として計上した飲食代について、「誰と、何の目的で、どんな話をしたのか」を領収書の裏に一言メモしておくだけで、印象は大きく変わります。逆に、高額な飲食代の相手先が答えられない、あるいは家族名義のクレジットカードで支払われた経費が混じっていると、そこから芋づる式に他の経費も疑われ始めます。

領収書は保管しているだけでは不十分で、「説明できる状態」にしておくことが重要です。

第2位:その売上、いつ計上しましたか

次に来るのが、入出金のタイミングです。いわゆる「期ズレ」ですね。

3月決算の会社で、3月末に納品した商品の売上を翌期の4月に計上していないか。逆に、翌期分の経費を当期に前倒しで計上していないか。こうした期ズレは、意図的な脱税ではなく単なる経理処理のミスであることがほとんどです。

ですが調査官からすると、期ズレが多い会社は「利益調整をしている可能性がある」と見えてしまいます。特に決算月をまたぐ取引は、請求書の発行日・納品日・入金日の3点がバラバラになりやすく、狙われやすいポイントです。

月次決算のタイミングで、決算月をまたぐ取引だけでもチェックリストを作って確認しておくと、調査当日にスムーズに説明できます。

第1位:現金、どこに消えましたか

そして最も聞かれるのが、現金のやり取りです。

売上の一部を現金で受け取っている業種、例えば飲食業や美容業、小売業などは特に狙われます。理由はシンプルで、現金取引は銀行口座に痕跡が残らないため、売上除外が最も疑われやすい取引だからです。

レジの現金残高と帳簿上の現金残高が合わない、あるいはレジを通さない「裏メニュー」的な取引がある場合、調査官はここを徹底的に掘り下げてきます。日々の現金出納帳をつけていない会社は、この時点で心証が悪くなってしまうケースも珍しくありません。

現金商売をされている社長は、レジ締めの記録と帳簿の突合を、月一回ではなく日次で行う習慣をつけておくことをおすすめします。

準備は「調査が来てから」では遅い

この3つに共通しているのは、いずれも一朝一夕には対策できないという点です。

領収書のメモ書き、期ズレのチェック、現金出納帳の突合。どれも地味な作業ですが、調査が入ってから慌てて過去の取引を説明しようとしても、記憶は曖昧ですし、証憑も揃っていないことがほとんどです。

税務調査は「いつか来るもの」ではなく「いつ来てもおかしくないもの」として捉え、日々の経理の中でこの3つのポイントを意識しておく。それだけで、調査当日の心理的な負担はかなり軽くなります。

まだ現金出納帳を日次でつけていないなら、今月から始めてみるのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。