先日、顧問先の社長からこんな話を聞きました。同業の集まりで、税務調査を受けた2人の社長の話題になったそうです。
1人は無事に調査を終え、追加で払った税金にも「まあこんなものか」と納得していました。もう1人は、同じように調査が入ったのに、本税に加えて重加算税まで課され、顔が真っ青だったそうです。
2人とも、やましいことがあったわけではありません。分かれ道は、調査官とのやり取りの中にありました。
社長Aと社長Bに何が起きたか
社長Aの会社は、売上の一部に計上漏れが見つかりました。単純なミスです。調査官から資料の提出を求められると、社長Aは経理担当者と一緒に該当する請求書や通帳のコピーをすぐに揃え、聞かれたことには正直に答えました。
結果、課された加算税は10〜15%程度。追徴税額はそれなりの金額でしたが、「ミスはミスとして認めた上での結果」として、社長Aは前を向いて受け止めていました。
一方の社長Bも、似たような売上の計上漏れでした。ところが調査官から資料提出を求められた際、「今ちょっと見当たらなくて」「担当が辞めてしまって分からない」といった対応を繰り返してしまいます。悪気があったというより、単に後ろめたさから資料を出し渋ってしまったようです。
この対応が、調査官には「事実を隠そうとしている」と映りました。最終的に「隠蔽・仮装があった」と判断され、課されたのは重加算税35%。社長Aとの加算税率の差は、実に最大25ポイントにも開きました。
加算税と重加算税、何がそんなに違うのか
単純な計上漏れや解釈の相違であれば、過少申告加算税は10%、金額によって15%が上乗せされる程度で済みます。
ところが「事実を隠蔽・仮装した」と認定されると、税率はいきなり35%に跳ね上がります。重加算税は、単なる追徴課税ではなく「悪質だ」というレッテルのようなものです。一度この認定を受けると、翌年以降の税務調査でも当局からの見られ方が変わってくると考えられます。
しかも重加算税の対象になった申告漏れは、金融機関への融資審査や事業承継の際にも、印象面でマイナスに働く可能性があります。金額以上に、この「レッテル」の重さを軽く見ない方がよいでしょう。
明暗を分けたのは、金額でも悪質さでもなかった
社長Aと社長Bの申告漏れの内容自体は、実はそこまで大きく違いませんでした。分かれ道になったのは、資料提出という初動対応です。
税務調査官は、資料が出てこない、説明が二転三転する、担当者に責任を押し付けるといった態度を、事実そのものと同じくらい重く見る傾向があります。「隠している」という心証を一度持たれてしまうと、後から誠実に説明しても覆すのは簡単ではありません。
逆に言えば、ミスがあったとしても、資料をすぐに揃え、聞かれたことに素直に答える姿勢さえあれば、重加算税まで踏み込まれるケースは多くないと考えられます。調査は「隠すか、隠さないか」で結果が大きく変わる場だと捉えておくのがよさそうです。
調査が来る前にできる備え
日頃から請求書や通帳のコピー、契約書といった証憑をすぐに取り出せる状態にしておくこと。これだけで、いざ調査が入ったときの初動が大きく変わります。
担当者が退職して資料の所在が分からなくなる、という社長Bのようなケースも珍しくありません。経理担当者が変わるタイミングで、過去の資料の保管場所を引き継いでおくことも、地味ですが効果の大きい備えです。
もし過去の申告に不安な点があるなら、調査が入る前に顧問税理士と一緒に見直しておくことをおすすめします。指摘される前に自主的に修正しておけば、加算税率そのものが軽くなる余地もあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。