先日、ある製造業の社長から「税務調査が来ることになったんですが、何を見られるんでしょうか」という相談を受けました。

売上も利益も特に不自然な動きはない。それでも社長の表情は硬いままでした。話を聞いていくと、不安の正体は経費でした。飲食費、車両費、家族への給与。「これ、突っ込まれたらどう説明しよう」という漠然とした心配です。

実際、税務調査で否認される経費には、はっきりした共通点があります。それは「事業との関連を説明できるかどうか」、ただそれだけです。

狙われやすい経費の共通点

税務署のOBに話を聞くと、狙われやすいのは決まって次の3つだと言います。

1つ目は、事業との関連が説明できない交際費です。誰と、何のために飲食したのかが曖昧なまま計上されているケースです。

2つ目は、私的利用が混じる費用です。社用車や携帯電話など、仕事とプライベートの両方で使うものが典型例です。

3つ目は、家族への不透明な支払いです。役員報酬や給与という名目でも、実際の勤務実態が伴っていないと厳しく見られます。

どれも「経費として計上すること自体」が問題なのではありません。問題は、その経費が事業のために使われたことを証明できるかどうかです。

論点は「事業目的かどうか」の一点

ある参謀役の税理士は、この3つを整理してこう言いました。飲食や旅行が事業目的だったのか。社用車がプライベート兼用になっていないか。結局のところ、論点はこの一点に集約されるのだと。

交際費であれば、取引先との商談や関係構築のために使われたのか、それとも単なる私的な飲食だったのか。旅費であれば、出張の実態があったのか、家族旅行を経費に付け替えていないか。ここが説明できるかどうかで、扱いはまったく変わってきます。

社用車も同じです。営業で使う車を、休日に家族で買い物に使う。これ自体は珍しいことではありませんが、按分の記録がなければ、税務調査では「全額プライベート利用」と見なされかねません。

関連を証明できなければ、重加算税もあり得る

ここが一番怖いところです。関連を証明できなければ経費は否認されます。さらに、意図的な仮装や隠蔽があったと判断されれば、通常の追徴課税に加えて重加算税が課されます。

重加算税は過少申告加算税や不納付加算税に代えて課される、いわば「罰」に近い性質の税金です。税額そのものが増えるだけでなく、悪質な脱税と認定された記録が残ることの信用面のダメージも小さくありません。

決算前に慌てて領収書をかき集めても、「その支出が事業のために必要だった理由」までは後から作れません。だからこそ、日頃の記録が効いてきます。

説明できる経費は強く、説明できない経費は弱い

対策はシンプルです。日付、相手、目的の3点を、支出が発生したそのタイミングで記録しておくことです。

交際費であれば、いつ、誰と、何の商談のために会食したのかを一言添えておく。社用車であれば、業務利用とプライベート利用の割合を、月次でもよいので記録しておく。家族への給与であれば、実際の業務内容と勤務時間を、他の従業員と同じように管理しておく。

これだけで、税務調査に対する経費の強さはまったく変わります。説明できる経費は強く、説明できない経費は弱い。突き詰めれば、それだけの話なのです。

領収書の束を保管することに満足せず、「なぜその支出が必要だったか」を一言残す習慣をつけておくと、いざという時の安心感がまったく違います。まだ交際費や社用車利用のルールを社内で明文化していないなら、今期中に整えておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。