先日、都内で不動産管理業を営む社長から、こんな相談を受けました。
「毎月届くメール添付の請求書、うちはちゃんと印刷してファイルに綴じてますよ。紙の方が安心じゃないですか」
実はこれ、今の税制ではアウトです。電子で受け取った請求書を紙に印刷して原本を消してしまうと、電子帳簿保存法の要件違反になってしまいます。
メールで受け取った請求書は「データのまま」が原則
電子帳簿保存法では、メールに添付されて届いた請求書や、web上からダウンロードした請求書は、電子データのまま保存することが義務づけられています。
紙に印刷して保管するだけでは足りません。しかも、印刷した紙だけを残してデータ自体を削除してしまうと、明確な要件違反になります。うっかり「もう紙にしたから」とメールを削除してしまう経理担当者は、実は少なくありません。
心当たりのある社長は、まず社内でこのルールが周知されているかを確認してみてください。
検索できる状態も求められている
電帳法が求めているのは、データを保存しておけばそれで終わり、という話でもありません。
日付・金額・取引先名の3つで検索できる状態にしておくことも要件のひとつです。フォルダの奥深くに雑多なファイル名で放り込んであるだけでは、実質的に検索できる状態とは言えません。
税務署OBの話では、実際の税務調査でも「このデータを見せてください」とデータそのものの提示を求めるケースが増えているとのことです。紙のコピーを見せて済ませようとしても、それでは対応にならない場面が出てきています。
専用システムがなくても対応できる
「うちは会計ソフトが古いし、専用の電子帳簿保存システムなんて導入していない」という社長も多いと思います。
実は、高価なシステムを入れなくても対応する方法はあります。ファイル名を「日付_取引先名_金額」のようなルールで統一し、それとあわせて索引簿(エクセルの一覧表で十分です)を作っておけば、検索要件は満たせます。
難しく考える必要はありません。まず取り組むべきは、受け取った請求書データを絶対に消さないという運用を社内で徹底することです。仕組みは後から整えていけば十分間に合います。
注意しておきたいポイント
特に気をつけたいのは、経理担当者の善意による「整理」です。紙にまとめた方が見やすいと考えて、データを消してしまうケースが実際にあります。
社長自身が電帳法のルールを把握していないと、こうした動きを止められません。一度、自社の請求書データの保存フローを担当者と一緒に確認しておくことをおすすめします。
まだ社内でルール整備ができていないなら、今期中に「消さない」「検索できる状態にする」の2点だけでも整えておくと安心です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。