先日、複数の会社を持つ社長から、こんな相談を受けました。

「事業ごとに会社を分けておけば、それぞれ設立から2年間は消費税が免税になりますよね」

一昔前まではよく聞いた話です。ですが今、この発想で新しく会社を作るのは、正直かなり危険です。

税務署は「新設法人の免税」を重点的に見ている

消費税には、新しく設立した法人の最初の2期は原則として納税義務が免除されるという仕組みがあります。基準期間の課税売上高がまだ存在しないためです。

この仕組みを利用して、同じような事業内容の会社を次々と設立し、免税期間だけを使い回すようなやり方が一時期広がりました。

ですが、ある税務署OBの方に聞いたところ、こうした「新設法人を渡り歩く」タイプの手口は、今や重点的な調査対象になっているそうです。設立と休眠、あるいは類似事業の会社の乱立といったパターンは、申告データの分析で比較的見つけやすいというのが実情のようです。

5億円超の会社が支配する新設法人は、そもそも免税になれない

それ以前に、制度そのものにも歯止めがかかっています。

課税売上高が5億円を超える法人などに支配されている新設法人は、基準期間がなくても最初から消費税の納税義務が免除されない、という特例規定があるためです。いわゆる特定新規設立法人の制度です。

つまり、体力のある会社がオーナーとなって次々と子会社を作り、それぞれの免税期間を利用するという発想そのものが、制度上すでに封じられているケースが少なくありません。分社すれば必ず2年間得をする、という前提はもう成り立たないと考えておいた方が安全です。

実態が同じ事業の付け替えなら「租税回避」と認定される

仮にこの支配関係の規定に該当しない規模の会社であっても、油断はできません。

事業の中身や取引先、従業員がほとんど変わらないまま、法人格だけを次々と作り替えているような場合、税務署はその実態を見て判断します。事業上の理由がなく、税負担を減らすことだけを目的にした分社だと認定されれば、租税回避行為として否認される可能性があります。

否認された場合、当然ながら本来納めるべきだった消費税に加えて、延滞税や加算税も上乗せされます。免税期間で浮いたはずの金額をはるかに超える負担が、後から一気に降りかかってくるわけです。

分社は「事業上の必然性」があってこそ意味を持つ

ここで誤解してほしくないのは、分社そのものが悪いわけではないということです。

事業部門ごとにリスクを切り分けたい、後継者に承継させる範囲を明確にしたい、取引先や許認可の都合で別法人にせざるを得ない。こうした事業上の必然性がある分社は、まったく問題のない、むしろ経営判断として理にかなった選択です。

問題になるのは、税金を減らすことそのものが分社の主目的になっているケースです。この場合、会社を分けるだけでも登記費用や税理士費用、それぞれの決算・申告にかかる事務コストが余分にかかります。免税で浮くはずだった金額より、維持コストの方が大きくなることも珍しくありません。

否認リスクまで考えれば、税金だけを目的にした分社は、割に合わない選択になりやすいというのが現場の感覚のようです。

分社を検討するなら、目的を先に言葉にしておく

会社を分けること自体は経営の選択肢として十分にありです。ただし、その分社が「なぜ必要なのか」を、税金以外の理由で説明できるかどうかが分かれ目になります。

もし今、複数の会社を作る計画があるなら、免税期間の話は一度脇に置いて、事業上の目的をきちんと言葉にしておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。