先日、ある卸売業の社長から「短期払いの保険なら、数年で一気に損金が作れるらしい」という相談を受けました。保険営業からそう勧められ、決算対策として乗り気になっていたようです。

結論から言うと、短期払いは損金化のスピードを変えるだけで、税金そのものを軽くする仕組みではありません。むしろ、出口で戻ってくる課税のタイミングも早まるだけなので、話半分で聞いておくくらいがちょうどいいです。

払込期間が短くても資産計上ルールは同じ

まず押さえておきたいのは、法人保険の損金・資産計上の割合を決めているのは「払込期間の長さ」ではなく「解約返戻率の高さ」だという点です。

短期払いにして5年で払い込みを終えたとしても、返戻率が70%を超えるような商品であれば、資産計上すべき割合は長期払いの契約とまったく同じ基準で計算されます。払込期間を短くしたからといって、損金にできる割合が増えるわけではありません。

「短期間で払い終わるから、その分たくさん損金にできる」というのは半分誤解で、正しくは「同じ割合の損金を、短い期間に凝縮して計上している」だけなのです。

損金が前倒しなら、益金も前倒しでやってくる

短期払いのメリットとしてよく語られるのが、「数年で損金枠を使い切れる」というスピード感です。たしかに、10年かけて損金化するより5年で終えるほうが、目先の決算対策としてはインパクトがあります。

ですが、忘れてはいけないのが出口です。解約返戻金は、解約した事業年度にまとめて益金として計上されます。払込期間を短くするということは、返戻率がピークを迎える時期、つまり解約に適した時期も早くやってくるということです。

例えば、10年払いの契約なら解約検討のタイミングは10年後にゆっくり訪れますが、5年払いなら5年後にはもう出口を考え始めなければなりません。損金化のスピードを上げた分、益金課税に向き合うまでの時間も短くなっていると考えてください。

出口設計にかけられる準備期間が短くなる

ここが短期払いの一番のリスクです。解約返戻金による益金を相殺するには、役員退職金や設備投資の特別償却など、大きな損金をぶつける出口設計が欠かせません。

長期払いであれば、10年近い時間をかけて「誰の退職金にぶつけるか」「どのタイミングで大型投資を予定するか」をじっくり検討できます。ところが短期払いでは、この準備期間そのものが数年単位に圧縮されてしまいます。

実際、払込を終えて数年後に「そろそろ解約時期です」と保険営業から連絡が来てから、慌てて出口を考え始める社長は少なくありません。準備期間が短い分、選べる出口の選択肢も限られてしまうのです。

短期払いを選ぶなら出口のスケジュールを先に引く

短期払い自体が悪いわけではありません。決算対策のスピード感が欲しい会社にとっては、有効な選択肢のひとつです。ただし、加入する段階で出口までのスケジュールを先に引いておくことが前提になります。

具体的には、払込終了後の何年目に解約を想定するか、その年に退職金を支給できる後継者や役員がいるか、あるいは設備投資の計画と重なるかを、加入時点でシミュレーションしておくべきです。

すでに短期払いの契約を進めている、あるいはこれから提案を受けているという方は、契約前に顧問税理士と一緒に「出口の年に何をぶつけるか」まで確認しておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。