先日、ある建設業の社長からこんな相談を受けました。決算前に利益が予想より膨らんでしまい、知人に「外注費として処理できないか」と請求書だけ書いてもらおうとしていた、というのです。
幸い実行前に踏みとどまったのですが、もし振り込んで経費計上していたら、かなり危ない橋を渡るところでした。
外注費として認められる条件
外注費は、法人税法上「実際にその役務提供があったかどうか」が最も重視される経費のひとつです。請求書があるだけでは足りません。
税務調査で問われるのは、次のような点です。
- 実際にどんな作業を、いつ、誰が行ったのか
- 成果物や納品物が存在するか
- 対価の金額が業務内容に見合っているか
請求書という「紙」は簡単に作れます。だからこそ税務署は、紙の裏にある実体を執拗に確認してきます。
反面調査と資金の流れで簡単に見抜かれる
税務調査官は、外注先に対して直接連絡を取る「反面調査」を行うことがあります。外注先本人に「どんな仕事をしましたか」と聞くだけで、話の辻褄が合わなければすぐに矛盾が出ます。
さらに厄介なのが資金の流れです。外注費として振り込んだお金が、数日後にほぼ同額で社長個人の口座やその家族の口座に戻ってきていないか。銀行の取引履歴は税務署が金融機関に照会すれば筒抜けになります。
相手方が確定申告でその外注収入をきちんと申告しているかどうかも、突き合わせの対象です。外注先が無申告だったり、そもそも事業実態のない個人だったりすると、それだけで疑いは一気に強まります。
悪質と判断されると重加算税の対象に
単なる経理ミスであれば過少申告加算税で済むケースもありますが、実体のない経費をあえて作り出したと判断されれば話は別です。
事実を仮装・隠蔽した「仮装隠蔽」に該当すると認定されれば、重加算税が課される可能性があります。本税に加えて重い加算税がのしかかるうえ、悪質性が高いと判断されれば刑事告発に発展するケースも報道されています。
経費を水増しして節税したつもりが、結果として本税以上の負担を背負うことになりかねません。
実体を伴う外注だけを計上する
外注費を計上する際に手元に残しておきたいのは、次のようなものです。
- 業務委託契約書
- 作業内容が分かるメールやチャットのやり取り
- 成果物そのもの、または納品の記録
- 稼働時間や工数のメモ
特に一人親方や個人事業主への外注が多い業種では、こうした記録が薄くなりがちです。だからこそ、税務調査で真っ先に狙われやすいポイントでもあります。
節税は、実際に発生した費用をきちんと計上することの積み重ねです。存在しない経費を作ってしまうと、節税どころか会社の信用そのものを失いかねません。
もし外注費の中に「請求書はあるけれど、具体的な業務内容を説明できないもの」が混ざっているなら、今期のうちに実態を整理しておくことをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。