先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。「逓増定期保険に入れば、保険料が全額損金になるって保険屋さんに言われたんですが、本当ですか」。
結論から言うと、その説明はもう古いんです。今それを全額損金前提で勧めてくる担当者がいたら、少し警戒したほうがいいかもしれません。
令和元年の改正で何が変わったのか
以前は、多くの逓増定期保険で保険料の全額を損金に算入できる商品設計が可能でした。保険会社もそれを大きな売り文句にしていた時代です。
ところが2019年7月、国税庁は法人保険の税務ルールを大きく見直しました。それまでのように「商品の型」で損金算入割合が決まるのではなく、「最高解約返戻率」という基準で一律に判定される仕組みに変わったのです。
この改正の背景には、保険を使った利益の繰り延べが行き過ぎていたという問題意識がありました。全額損金をうたう商品が節税目的だけで販売されるケースが目立ち、国税庁がメスを入れた形です。
返戻率が高いほど、損金にできる割合は下がる
新しいルールをざっくり言うと、解約したときに戻ってくるお金の割合(最高解約返戻率)が高い商品ほど、資産計上しなければならない部分が増える、という設計です。
例えば最高解約返戻率が70%を超えるあたりから資産計上の比率が上がり始め、85%を超える商品では、当初の一定期間はほとんどのケースで保険料の6割前後を資産計上する必要が出てきます。
返戻率が低ければ従来どおり全額損金に近い扱いも残っていますが、それは「解約時にあまり戻ってこない」商品を選んだ場合の話です。節税効果と解約返戻金、どちらを取るかはトレードオフになっているとイメージしてもらうと分かりやすいと思います。
提案を受けたら、まず確認すべきこと
保険営業の中には、いまだに古い前提のまま「全額損金で節税できます」と説明してくる方もいます。悪気はなく、単に情報が更新されていないだけということも多いのですが、社長側が知識を持っていないと、資産計上分を見落として資金繰りの計算が狂うことがあります。
提案書を受け取ったら、次の2点は必ず確認してください。
- その商品の最高解約返戻率は何%か
- 損金算入できる割合と、資産計上しなければならない割合はそれぞれ何%か
保険は本来、保障を買うものです。節税効果はあくまで副次的なメリットとして捉え、資産計上分も含めたキャッシュフロー全体で判断することをおすすめします。
もし手元にある提案書が「全額損金」を前面に押し出しているなら、一度顧問税理士に最高解約返戻率を確認してもらうのがいいでしょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。