先日、顧問先の社長から夕方に電話が入りました。「税務署から来週調査に来るって連絡があって……何か問題になりますかね」。声がわずかに震えていました。

税務調査の通知ほど、経営者の心臓をドキッとさせるものはないでしょう。でも実は、税務署には「この会社を調べてみよう」と判断する、ある程度パターン化された基準があります。逆に言えば、そのパターンを事前に知っておけば、今のうちに手を打つことができるのです。

税務署が調査先を選ぶ3つの着眼点

税務署はすべての企業を調べる時間も人員もありません。膨大なデータの中から「怪しい」と判断した企業を絞り込んでいきます。

その判断基準として代表的なのが、業界平均と比べた利益率の低さです。同業他社が平均20%の利益率を出しているのに、あなたの会社が5%だとすると、「何か経費を多く計上しているのでは?」とマークされやすくなります。

次が売上や利益の急変動です。前年比で売上が変わらないのに交際費だけ2倍に増えている、あるいは利益が突然半減している——こういった変化は、税務署のシステムでアラートが立ちやすいのです。

そして3つ目が現金取引の多さです。飲食業や小売業など、現金売上が多い業種は昔から調査対象になりやすい傾向があります。帳簿に載らない売上が発生しやすいという業種特性があるためです。

この3つのうち1つだけなら大きな問題にはなりにくいのですが、2〜3つが重なると一気に調査対象として浮上してきます。「うちは大丈夫」と思っている会社ほど、気づかないうちに複数の条件に該当していることがあります。

今すぐ確認してほしい3つのポイント

調査が来てから慌てても、できることは限られます。通知が届く前の今が、唯一の「点検チャンス」です。

①領収書の保管状態を確認する

まず確認してほしいのが、過去5年分の領収書がきちんと保存されているかどうかです。電子帳簿保存法の改正もあり、紙・データの管理が曖昧な会社は要注意です。バラバラに保管していたり、一部が見当たらなかったりするだけで、調査の心証が悪くなります。

②飲食交際費に「法定5項目」が書かれているか

飲食費を損金に算入するためには、次の5つの情報を記録しておく必要があります。飲食の年月日、参加した取引先の氏名と会社名・関係、参加人数、金額、飲食した店の名称と所在地——この5項目です。

レシートだけあっても、「誰と行ったか」が書かれていなければ、調査で交際費として認められないケースがあります。「まあレシートがあれば大丈夫だろう」と思っている会社は、今すぐ記録の整備を始めてください。

③役員報酬が毎月同じ金額か確認する

意外と見落とされがちなのが役員報酬の定期同額性です。役員報酬は、事業年度の途中で変更すると、増額分が損金に算入できなくなります。支払い記録を見て、毎月同額で支払われているかどうか確認してみてください。

「隠蔽・仮装」と認定されると重加算税35%が加算される

通常の申告漏れであれば、不足税額に加えて過少申告加算税(10〜15%)と延滞税がかかります。それだけでも痛いのですが、もし税務署に「意図的に隠していた」と判断されると、**重加算税35%**が上乗せで課されます。

重加算税の対象になるのは、二重帳簿の作成、領収書の改ざん、私的な支出を会社の経費に紛れ込ませるといった行為です。「そんなことはしていない」と思っていても、処理の仕方によっては意図せず仮装と判断されてしまうケースもあります。

少しでも「この処理、大丈夫かな」と感じるものがあれば、調査の通知が来る前に税理士に相談することを強くおすすめします。調査前に自ら修正申告をすれば、重加算税は課されず、過少申告加算税も軽減されるケースがあります。

点検を「習慣」にしておくことが最大の防御

税務調査は、来てしまってからでは手の打ちようが限られます。しかし、通知が来る前なら打てる手がたくさんあります。

交際費の記録整備と領収書の管理体制は、今日から始められる対策です。決算が近い会社は特に、今期の経費処理を一度洗い直してみてください。大きなミスが見つかる前の小さな点検が、結果的に会社と社長自身を守ることになります。

気になる処理が一つでもある方は、ぜひ顧問税理士に「ちょっと見てもらえますか」と声をかけてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。