先日、ある社長からこんな相談を受けました。
「法人を作って4年になるんですが、家賃も車の保険もスマホ代も、全部個人の口座から引き落とされてるんですよね。これって会社の経費にならないんですか?」
計算してみたら、年間280万円ほどの支出が個人払いのままでした。法人化しているのに、そのメリットをほとんど使えていなかったわけです。
こういう社長、実は珍しくありません。「法人にした」という事実に安心して、経費化の設計まで手が回っていないケースです。今回は「法人なのに個人払いになりがちな支出」の代表格を9つ、節税インパクトの大きい順に整理します。
1位:役員社宅——年150万円超が経費になることも
節税効果がもっとも大きいのが役員社宅です。
仕組みはシンプルで、会社が物件を借り上げ、役員に転貸します。役員は国税庁の通達に基づいて算定した「賃料相当額」のみを会社に払えばよく、その差額が丸ごと法人の経費になります。
たとえば月20万円の家賃なら、役員負担は数万円程度で済むケースもあります。年換算で150万円を超える節税効果が出ることも決して珍しくありません。
ただし、賃料相当額は物件の固定資産税評価額をもとに計算するため、物件や築年数によって金額が変わります。計算を誤ると「給与課税」になるリスクがあるので、導入時は必ず税理士と一緒に数字を確認してください。
2位:社用車——ガソリンから保険まで全部経費に
「個人名義の車を仕事でも使っている」という社長は多いですが、これは非常にもったいない状態です。
会社名義で購入またはリースすれば、ガソリン代・駐車場代・車検費用・任意保険料がすべて法人経費になります。さらに減価償却も加わるので、年間100万円を超える節税効果が出ることも珍しくありません。
既に個人名義の車がある場合は、適正価格で会社に売却する方法もあります。ただし時価での売却が原則なので、こちらも税理士に確認しながら進めることをおすすめします。
3位:通信・機器費——スマホとPCが経費になる
スマホ代・自宅のWi-Fi・仕事用のノートPCやタブレット——これらを個人のカードで払い続けている社長も少なくありません。
業務利用分は法人経費として計上できます。スマホは業務利用割合に応じて按分するのが原則ですが、仕事の比重が高ければ大部分を経費化できます。年間50万円を超える個人支出が、そのまま会社の経費に変わるケースも多いです。
残り6カテゴリも合わせると「300万円」の壁が見える
ここまでの3つだけで年200万円超ですが、残りの6カテゴリを加えると300万円規模になります。
- 役員・家族への報酬:家族従業員への給与は所得を分散できるため、世帯全体の税負担が下がる
- 生命保険料:法人契約の保険は種類によって全額または一部を損金算入できる
- 出張日当:旅費規程を整備すれば、実費精算とは別に非課税の日当を支給できる
- 交際費:資本金1億円以下の法人なら年800万円まで全額損金算入可能
- 健康診断・人間ドック:役員・従業員全員が対象なら福利厚生費として経費化できる
- 研修・書籍費:業務に関連する学習費用は法人経費として計上できる
これらをリストアップすると、「捨てていた経費」の規模感が見えてきます。
「個人払い支出リスト」を一度作ってみてください
法人化は節税の入り口に過ぎません。役員社宅・社用車・通信費をきちんと法人経費に移行するだけで、手取りが大きく変わります。
まずは「自分が個人で払っている支出リスト」を紙に書き出して、税理士に見せるところから始めるのが現実的な第一歩です。特に役員社宅は導入タイミングも重要で、設定を誤ると給与課税になるリスクもあります。今期の決算前に、一度立ち止まって確認してみてください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。