先日、フリーランスのコンサルタントをしている方から相談を受けました。「年収が700万円を超えてきたんですが、そろそろ法人化すべきでしょうか?」
このご相談、本当によく聞きます。法人化は「なんとなくやったほうがいい気がする」と思いながら、踏み切れずにいる方が多い。でも判断の軸は、ほぼ3つに絞られます。
3位:業種によっては、法人化がマイナスになる
意外と知られていないのが、業種による違いです。
「法人化すれば節税になる」——これ、一概には正しくありません。特に一人で動くコンサルタントや士業のように、人件費がほぼかからない事業では注意が必要です。
法人化すると、役員報酬に対して社会保険料の事業主負担が発生します。健康保険と厚生年金を合わせると、給与の約15〜20%が会社負担になる計算です。年収700万円の報酬設定なら、100万円超が社会保険料として出ていく。これが節税額を上回ると、法人化してかえって手取りが減るケースが生まれます。
人を雇っていたり、売上規模が大きく経費計上の幅が広い事業なら話は変わります。でも「一人で稼ぐ」スタイルの方は、まず収支シミュレーションをきちんとやることをおすすめします。
2位:設立のタイミングで消費税が最大2年分変わる
次に重要なのが、設立の時期です。これは知っているかどうかで数十万円の差が出る話です。
消費税には「設立から2年間は免税になる」という原則があります。ただし、前事業年度の課税売上が1,000万円を超えると免税が使えなくなる条件があります。
個人事業主として売上が1,000万円に迫ってきたタイミングがポイントです。超えた後に法人を設立すると、免税期間が想定より短くなってしまうケースがある。一方、超える前の年に法人を設立しておけば、新設法人として免税期間をフルに使える可能性が生まれます。
年間売上1,000〜2,000万円規模なら、この差は数十万円になります。気づいたときにはすでに手遅れ——ということが多いので、売上が伸びてきたら早めに動くのが賢明です。
1位:年収600〜700万円が、本当の分岐点
そして最も多くの方に直結するのが、年収の水準です。
個人事業主として稼ぐ場合、所得税と住民税の合計実効税率は所得が増えるほど上がります。年収600〜700万円を超えてくると、実効税率が30%を超えるラインに差し掛かってきます。
一方、法人税は所得800万円以下なら実効税率が約23%程度(中小法人の軽減税率適用時)に抑えられます。この税率差が開いてくるのが、だいたい年収600〜700万円のゾーンです。
もちろん、法人化には設立費用や税理士顧問料、社会保険料負担など追加コストもあります。税率差だけで判断せず、実際のキャッシュフローで比較することが大切です。同じ年収600万円でも、経費の使い方や報酬設計によって結果は変わります。
「お得そう」だけで動くと後悔する
法人化は手段であって、目的ではありません。「節税になるって聞いたから」という理由だけで設立すると、会計・申告・社会保険のコストが積み上がって、かえって負担が増えることがあります。
判断の順序としては、まず年収水準を確認する。次に業種の特性を考える。そして売上の伸びを見ながら、消費税免税のタイミングを逆算する。この3点を押さえた上で、税理士に具体的なシミュレーションを依頼するのが正しい手順です。
年収600万円を超えてきたら、一度きちんと試算してみてください。「あのとき動いておけばよかった」という後悔を、少なくとも一つ防げるはずです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。