先日、あるお客様の社長から緊張した声で電話がかかってきました。「税務署から調査に入ると連絡が来て……何から手をつければいいですか」。
話を聞くと、ここ数年で交際費と外注費がかなり増えていたとのこと。最終的に大きな追徴にはなりませんでしたが、調査の過程でいくつかの経費が問題視され、修正申告を余儀なくされました。
税務調査は「大企業だけの話」と思っていませんか。中小企業でも毎年多数の調査が実施されており、いざ入られると2〜3日は業務がほぼ止まります。そして引っかかりやすいポイントは、ある程度パターンが決まっています。今回は「経費計上の3大NGパターン」をランキング形式でご紹介します。
3位:交際費の「5項目」が一つでも欠けると全額アウト
交際費は、税務調査で真っ先にチェックされる科目の代表格です。なかでも、1人あたり1万円以下の飲食費の扱いは注意が必要です。
この金額要件を満たした飲食費は、交際費から除いて損金算入できる特例があります。コスト削減の観点でも使いやすいルールなのですが、利用するには帳票への記載が必須です。必要な5項目は、①年月日、②参加者の氏名または会社名、③人数、④金額、⑤飲食した店の名称と所在地——この5つです。
問題はここで、1項目でも欠けると全額否認されます。「毎月同じメンバーで同じ店に行くから大体わかるだろう」は通りません。件数が多い場合でも、1件ずつ記録が必要です。領収書の裏に手書きでメモするだけでも認められますので、支払い時にその場で書く習慣をつけておくのが一番の対策です。
2位:プライベートと仕事の境界線が曖昧な経費
次に問題になりやすいのが、個人的な費用が会社経費に紛れ込んでいるケースです。
よくあるのが、家族旅行の費用を「社員研修費」として計上するパターン。あるいは個人の趣味であるゴルフ用品を「接待用品」として処理するケースです。こうした支出は、業務との関連性を調査官が納得できるかたちで証明できなければ、即座に否認されます。
さらに問題なのは「意図的に混入した」と判断されたときです。そうなると、通常の過少申告加算税(10〜15%)に加えて、重加算税35%が別途課されます。税負担が一気に2倍以上に跳ね上がることになります。
税務調査官はレシートの日付・場所・金額を、関連する取引先の情報と突き合わせながら丁寧に確認します。「1〜2件なら見逃してもらえる」という甘い期待は、プロを前にすると通用しません。
1位:架空・水増し経費は「仮装・隠蔽」と認定される
経費計上で最も重大なNGが、架空経費と水増し経費です。
実態のない取引の請求書を作成する、実際より高い金額で計上する——こうした行為は、帳票の整合性チェックで発覚しやすいと言われています。税務調査では取引先への反面調査(先方への確認作業)も行われるため、数字がひとつでも合わなければすぐに露見します。
発覚した場合は「仮装・隠蔽」と認定され、重加算税35%の対象になります。悪質と判断されれば、故意の脱税として刑事告発に至るケースもゼロではありません。
節税と脱税は似て非なるものです。適法な方法で税負担を最適化することは経営の知恵ですが、架空経費の計上はその一線を明確に越えています。一時的に手元資金が増えて見えても、後から何倍もの代償が来るリスクを抱えることになります。
予防は「地味な整備」に尽きる
税務調査で問題になる経費の多くは、事前の整備で防げます。
交際費の記載漏れは、領収書フォーマットを整えるだけで解消できます。プライベート支出の混入は、社内で経費計上の基準を文書化しておくことで防線になります。外注費や業務委託費については、契約書と成果物の記録をセットで保管しておくことが基本です。
税務調査に備える最善策は、日頃から整合性の取れた記録を積み上げておくことです。もし今の経費管理に少しでも不安があるなら、決算前に顧問税理士と一度棚卸しをしておくことをおすすめします。調査が来てから慌てても、できることは限られています。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。