先日、個人事業から法人成りして3年目という建設業の社長と話していたとき、こんな一言が出てきました。「携帯代って、経費にできるんですか?」と。

毎月1万円以上払い続けて、ずっと個人の財布から出していたそうです。3年間で36万円以上。見えないところで、じわじわと損をしていたわけです。

通信費は毎月必ず発生するコストです。だからこそ、一度見直しておくだけで長く効いてくる節税になります。今回は、社長がよくやってしまう通信費の処理ミスを3つ、実務の視点でお伝えします。

按分という発想がそもそもない

個人のスマホを仕事でもプライベートでも使っている、という社長は多いと思います。問題は、「個人のものだから経費にならない」と最初から諦めてしまっているケースです。

実際には、仕事とプライベートを兼用しているスマホなら、業務に使っている割合に応じて法人の経費に計上できます。これを按分といいます。

月1万円の携帯代を仕事7割・プライベート3割で使っているなら、7,000円が経費になります。年間で8万4,000円。消費税の節税効果も加味すれば、さらに数万円が上乗せされます。5年続ければ50万円近い話になってきます。

「たかが携帯代」と思っているうちに、何年もの節税機会が積み重なって消えていく、というのが現実です。

自宅のWi-Fiルーターを個人で買っている

在宅や自宅兼事務所で仕事をしている社長に多いパターンです。インターネット回線の月額費用もルーター代も、すべて個人のお金で払っている、というケースです。

自宅兼事務所として使っているなら、ネット回線費用も按分で経費にできます。月5,000円の回線を仕事6割で使っているなら、毎月3,000円。年間で3万6,000円が個人負担になっています。

ここで大切なのが、按分割合の根拠を記録として残しておくことです。「なんとなく6割」では、税務調査のときに説明できません。業務日誌やスケジュールアプリの履歴など、実態を示せる記録を日頃からつけておく習慣が重要です。

ルーターを新しく買い替えるタイミングがあれば、法人名義で購入するのがおすすめです。

個人契約のまま法人で精算している

これが一番もったいないパターンです。契約名義は個人のままで、毎月の携帯代を会社に請求して精算している、という運用です。

この方法が絶対にダメというわけではありませんが、最初から法人名義で契約していた場合と比べると、消費税の仕入税額控除を受けにくくなることがあります。

仕入税額控除とは、法人が支払った消費税の一部を、納める消費税から差し引ける仕組みです。法人名義の請求書があれば活用しやすくなりますが、個人名義の精算では処理が複雑になる場合があります。年間で数万円の差になることもあり、長期で見ると無視できない金額になります。

契約の更新タイミングで法人名義への切り替えを検討してみてください。キャリアによっては、法人プランの方が月額料金が安くなるケースもあります。


通信費は「節税の目玉」ではありませんが、毎月確実に発生するコストだからこそ、正しく処理しているかどうかが積み重なって効いてきます。

まだ個人契約のまま精算している、または按分を一度も計算したことがないという方は、今期中に一度整理してみることをおすすめします。正しい処理を習慣にしておくことが、税務調査リスクの低減にもつながります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。