先日、建設会社を経営するある社長からこんな話を聞きました。「妻が毎朝来て請求書の整理や取引先への電話対応をしてくれているんですが、ずっとタダで働かせていました」と。

月換算でおよそ30時間以上の実務を担ってもらっているにもかかわらず、給与をまったく払っていなかったそうです。節税という観点から言うと、これは非常に「もったいない」状態です。

家族を従業員として雇い、きちんと給与を払う。これは合法かつ効果的な節税策であり、うまく活用すれば年間で数十万〜100万円以上の節税も現実的な話です。

なぜ家族への給与が節税になるのか

会社が従業員に支払う給与は、全額「経費」として処理できます。これは家族であっても同じです。

仮に配偶者に月20万円の給与を支払えば、年間で240万円が会社の利益から差し引かれます。法人税率がおよそ30%であれば、それだけで年72万円の節税になる計算です。

さらに、受け取る側にもメリットがあります。給与所得者には給与所得控除があるため、年収103万円以内であれば所得税はゼロ。年収130万円未満であれば社会保険の扶養にも入れるケースがあります。

会社側で経費を増やしつつ、家族の手元にはお金が残る。家族全体で見ると、二重においしい節税になるわけです。

具体的な節税シミュレーション

少し数字で整理してみましょう。

配偶者に月8万円(年96万円)の給与を払う場合、会社の節税額はざっくり30万円前後。受け取る側の所得税はゼロです。

月15万円(年180万円)にすれば、会社の節税額は54万円程度。受け取る側にも一定の所得税がかかりますが、それでもトータルでは節税効果が大きくなります。

月20万円(年240万円)なら、冒頭の通り会社側だけで年72万円の節税。受け取る側の手取りと合わせれば、家族全体の可処分所得は大きく変わってきます。

もちろん社会保険料の負担なども考慮する必要がありますが、それを差し引いてもメリットが出るケースは多いです。

個人事業主でも使える「専従者給与」

「うちは法人じゃないから関係ない」と思っている方もいるかもしれませんが、個人事業主にも同様の仕組みがあります。

青色申告をしている場合、「青色事業専従者給与」として家族への給与を経費にできます。ただしこちらはいくつかの条件があり、専ら事業に従事していること、給与額が「届出書」の範囲内であること、などが求められます。

法人と比べると制約が多いのも事実です。それが理由で「節税目的で法人化する」という選択をするオーナーも少なくありません。

絶対に押さえておきたい「実態」の条件

ここで必ず知っておいてほしいのが、実態のない雇用は認められないという点です。

税務調査で問題になるのは、「名前だけ登録して何もしていない」「実際には別の会社でフルタイム勤務している配偶者に給与を払っている」といったケースです。こうした場合、給与が経費として否認されるだけでなく、加算税や延滞税が課されることもあります。

逆に言えば、実態がきちんとあれば問題ありません。具体的には以下のような業務が対象になります。

  • 経理・帳簿管理
  • 電話・メール対応などの事務作業
  • 営業サポートや商品管理
  • SNS運用やブログ更新などの広報業務

大切なのは、業務内容を文書化しておくことです。何をどのくらいの時間やっているか、簡単な業務日報をつけておくだけでも、税務調査の際の証拠になります。

給与額の決め方と注意点

給与額は「業務内容に見合った金額」である必要があります。市場相場から大きく外れた金額を設定すると、税務署から指摘を受ける可能性があります。

法人の場合、役員に登用するかどうかによっても取り扱いが変わります。役員報酬は「定期同額給与」の原則があり、期中に勝手に変更できない点に注意が必要です。一方、従業員として雇用する場合はより柔軟に設定できます。

また、給与を支払う場合は源泉徴収義務が生じます。毎月の給与から所得税を天引きし、翌月10日までに納付する手続きが必要です。この事務負担も含めて運用設計しておきましょう。

今日からできること

配偶者や家族が実際に会社の業務を手伝ってくれているなら、今すぐ雇用契約書を作り、給与の支払いを始めることを検討してみてください。

「うちの妻は経理も電話もやってくれているけど、給与は払っていない」という社長は、意外と多いものです。それは節税チャンスを毎月みすみす逃しているとも言えます。

導入前には必ず税理士に相談して、業務内容・給与水準・源泉徴収の手続きをセットで整えてください。正しく設計すれば、家族にとっても会社にとっても、双方にメリットのある仕組みになります。

今期の決算を前に、まだ取り組んでいないのであれば、早めに動いておくのがおすすめです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。