先日、顧問先の社長からこんな一言をもらいました。

「うちの同業者、去年スタートアップに投資して節税したらしいんだけど、どういう仕組みなの?」

年商10億円ほどの製造業の社長で、毎期きっちり利益を出しているぶん、法人税の納税額も相当なものです。「知ってる人だけ得してるような気がして、なんか悔しい」と苦笑いしながら話してくれました。その気持ち、よくわかります。

実はこの「スタートアップ投資×税制優遇」の組み合わせ、正しく使えば最大2000万円規模の控除も視野に入る、かなり強力な節税スキームです。今回はその仕組みをできるだけわかりやすく解説します。

普通に納税している社長は、毎年数百万円を見逃している

法人税の実効税率はおよそ30〜35%。利益が1000万円出れば、300〜350万円が税金として消えていきます。これ自体は避けられないとしても、使える制度を使わずに満額払い続けるのは、正直もったいないです。

国はいま、スタートアップ企業への民間投資を強力に後押ししています。その政策的な意図と、社長の節税ニーズがうまく重なっているのが「エンジェル税制」と「オープンイノベーション促進税制」です。

この2つ、名前は難しそうですが、本質はシンプル。「スタートアップに投資してくれたら、その分の税金を負けてあげますよ」という制度です。

1000万円の投資で250万円が税金から直接消える

オープンイノベーション促進税制では、法人がスタートアップ企業の株式を取得した際、投資額の最大25%を法人税額から直接控除できます。

たとえば1000万円を投資すれば、250万円が法人税からそのまま引かれます。損金算入(費用扱い)とは違い、税額控除は税金の計算後に引くので効果が非常に大きいです。

さらに、要件を満たせばその株式を将来売却したときの譲渡益が非課税になるケースもあります。節税しながら、うまくいけばキャピタルゲインまで狙えるという、二重においしい構造になっています。

2024年度の税制改正では対象となるスタートアップの範囲も拡大され、以前より使いやすくなりました。制度の間口が広がっているいま、検討するタイミングとしては悪くありません。

「投資リスクが怖い」と思う社長へ

ここで多くの社長が躊躇するのが、「スタートアップって潰れるリスクあるよね?」という点です。これは正直な感覚だと思います。

ただ、節税効果込みで実質コストを考えると、印象が変わります。

1000万円を投資して、250万円が法人税から控除されるということは、実質的な持ち出しは750万円になるわけです。仮に投資先が厳しい状況になったとしても、損失の一部はすでに税負担軽減という形で回収できています。

もちろん、投資である以上リスクはゼロではありません。「節税になるから」と勢いで突っ込むのは禁物です。あくまで事業シナジーや将来性を見極めたうえで、税制優遇はボーナスとして捉えるというスタンスが健全です。

要件の確認だけは、絶対に抜かさないでください

この税制、メリットが大きい分、適用要件も細かく設定されています。

投資先のスタートアップが「特定の設立年数以内であること」「売上規模や従業員数の条件を満たすこと」「国が定める手続きを経ていること」など、クリアしなければならない条件が複数あります。

また、投資のタイミングや株式の取得方法によっても適用可否が変わります。「聞いたからやってみた」では通らないのが税制の世界です。

必ず顧問税理士と事前に相談し、要件を一つひとつ確認してから動くことを強くお勧めします。特に決算直前に慌てて動こうとするケースが散見されますが、この税制はある程度の準備期間が必要です。

今期の着地が見えてきたら、早めに動き出す

節税対策全般に言えることですが、決算の3〜6ヶ月前に動き始めるのが理想です。スタートアップ投資の場合は投資先の選定から手続き完了まで時間がかかるため、今期の利益が見えてきたタイミングで、税理士にこの制度の活用を相談してみてください

「うちの規模でも使えるのか?」「どんなスタートアップが対象になるのか?」という入口の質問だけでも、早めに投げかけておく価値があります。知っている社長と知らない社長の差は、動き出しのスピードで生まれることがほとんどです。


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。