先日、飲食チェーンを経営する社長からこんな相談を受けました。
「スタッフ全員で温泉旅行に行ったんですが、経費にできますか? 領収書はちゃんと取ってあるんですけど…」
結論から言うと、条件さえ満たしていれば全額経費にできます。ただし「ちゃんと領収書がある」だけでは不十分で、税務署が認めるための要件がいくつか決まっています。
これを知らないまま処理してしまうと、旅行代が「給与」として社員に課税されてしまうケースもあるので、ぜひ最後まで読んでみてください。
社員旅行が経費になる、たった3つの条件
① 全社員の50%以上が参加していること
まず大前提として、旅行に参加するのが「一部の人間だけ」ではNGです。税務上、福利厚生費として認められるためには、全社員の半数以上が参加していることが必要です。
「役員と幹部だけで行った豪華な旅行」は、どれだけ領収書を揃えても福利厚生費にはなりません。実態としては特定の人への報酬や交際費とみなされてしまいます。
社員数が少ない会社ほど気をつけてください。10人の会社なら5人以上の参加が必須。3人しか参加していなければ、それは「社員旅行」とは言えないわけです。
② 1人あたりの費用が10万円以内に収まっていること
次に気にしてほしいのが、1人あたりのコストです。旅行費用の総額を参加人数で割ったときに、10万円を超えてくると要注意です。
10万円という数字は法律で明確に定められているわけではありませんが、税務の実務では長年の慣習として目安とされています。これを大幅に超えると「社会通念上相当な範囲」を逸脱していると判断され、超過分が社員の給与として課税される可能性があります。
社員側にとっては突然「旅行に行ったら所得税がかかった」という話になりかねないので、行き先や宿を選ぶ段階でコスト感を計算しておくのが賢明です。
③ 旅行期間が4泊5日以内であること
3つ目は旅行の日数です。4泊5日を超える旅行は、全額が福利厚生費として認められなくなるケースがあります。
たとえば「社員みんなで1週間ハワイへ」という旅行は、いくら全員参加でも日数の要件を満たしません。海外旅行でも国内旅行でも、この4泊5日というラインは変わりません。
せっかく費用を会社で出しても、税務調査で否認されてしまえば追加の税金と加算税がのしかかります。日程を組む段階で「5日以内に収まるか」を確認しておく習慣をつけてください。
この3条件を守れば、旅行代が丸ごと節税に変わる
整理すると、社員旅行を経費にするための条件は次の3点です。
- 参加者が全社員の50%以上
- 1人あたりの費用が10万円以内
- 旅行期間が4泊5日以内
これを満たしていれば、宿泊費・交通費・食事代などの旅行にかかった費用を全額損金として処理できます。損金になるということは、そのぶん法人税の課税所得が減るということ。実質的に税金が安くなるわけです。
仮に30万円の社員旅行を実施したとして、法人税率が約30%の会社であれば、9万円ほど税負担が減る計算になります。どうせ社員に還元するなら、節税効果も得られる形で使いたいですよね。
やりがちな落とし穴:「形式だけ社員旅行」は危ない
ここで一点、注意しておきたいことがあります。
「全員参加にすればいい」と考えて、実態は一部の幹部しか行っていないのに書類だけ整える、いわゆる「形式だけ社員旅行」は絶対にやめてください。税務調査では実態を見られます。参加者リストの提出を求められたり、旅行中の写真を確認されることもあります。
また、旅行の名目であっても実態がほぼ「接待ゴルフ」や「取引先との懇親」であれば、交際費として処理するのが正しい姿です。名目と実態を一致させることが、税務上のトラブルを防ぐ最大の対策です。
旅行前に一度、税理士に確認を
今回紹介した3つの条件は、あくまで一般的な目安です。会社の規模や業種、旅行の内容によって判断が変わることもあります。
たとえば「一部の社員は業務上参加できなかった」という場合でも、合理的な理由があれば参加割合の計算から除外できることがあります。こういった細かい判断は、やはり顧問税理士に相談するのが確実です。
社員旅行を計画している経営者の方は、旅行の日程や予算が決まったタイミングで、一度税理士に「これ、経費になりますか?」と聞いてみてください。事前に確認しておけば、安心して旅行を楽しめますし、会社のお金を最大限に活かせます。
まだ福利厚生の制度や社内規程が整っていないなら、これを機に整備しておくのもおすすめです。制度として明文化されていると、税務調査でも説明しやすくなります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。