先日、製造業を営む社長からこんな相談を受けました。

「アメリカ出張のとき、現地での食事代や移動費がかさんで、日当だけじゃ全然足りないんですよね」

話を聞いていると、その会社の旅費規程には「日当:1日5,000円」とだけ書いてある。国内出張でも海外出張でも、同じ金額しか受け取れない設計になっていたんです。これ、かなりもったいない話です。

海外と国内は「別枠」で設定できる

旅費規程の日当というのは、国内と海外をまったく別の基準で設定してよいことになっています。当たり前といえば当たり前で、ニューヨークの物価と地方都市の物価が同じなわけがありません。

参考になるのが、外務省が公表している海外旅費の支給基準です。これをもとにすると、北米やヨーロッパ方面は1日あたり1万5,000円〜2万円、アジア圏でも1万円前後が合理的な水準とされています。一方、国内出張の日当は一般的に3,000〜8,000円が多いですよね。この差は小さくありません。

年に数回アメリカに出張するとして、1回5泊なら日当だけで最大10万円の差が生まれます。そしてこれが非課税で受け取れるとなれば、使わない手はないでしょう。

「規程に書いてあるか」が全てを決める

ここで重要なのは、どれだけ合理的な金額でも、旅費規程に明記されていなければ非課税扱いにならないという点です。

理想的な書き方は、こんなイメージです。「海外出張の場合は、渡航先の地域に応じて以下の日当を支給する。北米:15,000円、欧州:20,000円、東南アジア:10,000円」というように、地域ごとに金額を落とし込んでおくことが大切です。

「大体このくらいでやっている」では通用しません。規程という形で文書化されていることが、非課税の根拠になるからです。口頭の取り決めや慣習では、税務調査のときに一発でひっくり返されます。

根拠資料は必ず手元に残しておく

金額を設定するとき、もう一つ意識してほしいのが「根拠の保管」です。

外務省の旅費基準を参照したなら、その資料を印刷して保管しておく。同業の上場企業の旅費規程を参考にしたなら、それをコピーして残しておく。こうした資料が「この金額には根拠がある」という証明になります。

反対に、現地の物価実態と大きくかけ離れた金額は否認リスクが出てきます。たとえば東南アジア出張なのに「1日5万円の日当」というのは、さすがに説明がつきません。合理的な水準であること、そしてその根拠が示せること、この2つがセットで求められます。

旅費規程の整備は「今期中」がベスト

旅費規程は一度作ってしまえば、毎年自動的に節税効果が積み上がっていくものです。特に海外出張が年に複数回ある会社であれば、規程の整備前と後で手取りの感覚がかなり変わってくるはずです。

すでに旅費規程を持っている会社でも、「国内出張の日当」しか記載されていないケースは意外と多いです。この機会に、海外出張のセクションが設けられているかどうか確認してみてください。

まだ旅費規程を作っていないなら、今期中に整備することを強くおすすめします。出張のたびに「経費精算どうしよう」と悩む手間もなくなりますし、役員・社員の双方にとって透明性のある仕組みが作れます。設定する金額の水準感については、担当の税理士に相談しながら決めるのが一番安心です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。