先日、顧問先の社長からこんな相談を受けました。「今度うちに税務調査が入るんですが、調査官って最初に何を見るんですか?」
意外に思われるかもしれませんが、調査官が最初に目を通す帳簿にはある程度の「型」があります。今日はその優先順位を、実務でよく聞く話をもとにお伝えします。
第3位:株主総会の議事録
中小企業の場合、役員報酬の改定や役員賞与の支給といった重要な意思決定は、本来なら株主総会や取締役会の議事録に残しておく必要があります。
ところが実際には「形だけ議事録を作る」あるいは「議事録自体が存在しない」というケースが少なくありません。調査官はここを見て、会社が定めたルールに沿って経営が行われているかどうかを確認します。
役員報酬の期中変更などは、議事録の日付と実際の支給日にズレがあると、それだけで指摘の糸口になります。損金不算入とされてしまえば、法人税の負担は一気に増えます。
第2位:総勘定元帳の流れ
次に見られるのが、総勘定元帳です。これは会社のお金の動きを勘定科目ごとに時系列で記録したもので、いわば会社の「血流」にあたります。
調査官が特に注目するのは、期末近くに発生した不自然な取引や、金額の大きい仕訳が集中している時期です。例えば決算月に急に増える交際費や、役員個人への貸付金にあたるような入出金があると、そこを起点に周辺の取引まで遡って確認されます。
総勘定元帳は日々の記帳の積み重ねなので、後から整合性を取り繕うのが最も難しい帳簿でもあります。だからこそ調査官にとっては、会社の実態を映す鏡のような存在なのです。
第1位:現金出納帳の中身
そして最も早く、最も丁寧に見られるのが現金出納帳です。理由はシンプルで、現金は最も操作されやすく、かつ痕跡が残りにくい資産だからです。
実際の現金残高と帳簿上の残高が一致しているか、まずここが照合されます。もし数千円でもズレがあると、そのズレの原因を執拗に確認されることになります。「小口現金だから」と軽視して、レシートの提出が遅れたり、私的な支出が混ざっていたりすると、そこから他の帳簿全体への不信感につながりかねません。
現金出納帳は、会社の帳簿全体に対する調査官の「信頼度」を決める最初の関門と言ってもいいでしょう。
日頃の整備が最大の防御になる
ここまで見てきた3つの帳簿に共通するのは、いずれも「日々の積み重ね」でしか整合性を保てないということです。調査が入る直前に慌てて整えようとしても、日付のズレや記載内容の不自然さはすぐに見抜かれてしまいます。
逆に言えば、現金出納帳の残高照合を毎月きちんと行い、総勘定元帳の仕訳に説明のつかない動きがなく、重要な意思決定は都度議事録に残す。この3点を淡々と続けているだけで、調査官に与える印象は大きく変わります。
まだ現金出納帳の照合を月次で行う習慣がないなら、今期から取り入れておくのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。