先日、外注先を多く抱える製造業の社長から、こんな相談を受けました。「毎月の外注費、去年までと金額は同じなのに、なぜか消費税の納税額が増えている気がするんです」
決算書を確認してみると、原因はすぐにわかりました。取引先の中に、インボイス登録をしていない免税事業者が何社か混ざっていたのです。しかも今年の10月から、この影響はさらに大きくなります。
免税事業者への支払いは、そのままだと控除が減る
消費税の仕入税額控除は、原則として「インボイス(適格請求書)」を発行できる取引先への支払いにしか使えません。取引先が免税事業者のままだと、その支払いにかかる消費税分を、自社の納税額から差し引けなくなるのです。
例えば年間1,000万円を免税事業者への外注費として支払っている会社なら、消費税率10%として単純計算で100万円分の仕入税額控除が使えなくなる可能性があります。これがそのまま納税額の増加につながります。
取引先を選ぶとき、価格や品質は見ても「インボイス登録をしているかどうか」までチェックしている会社は、正直まだ多くありません。
経過措置があるうちは、まだ全額否認ではない
とはいえ、いきなり控除がゼロになるわけではありません。制度導入時の激変緩和として、免税事業者への支払いについても一定割合までは控除できる経過措置が設けられています。
2023年10月から2026年9月までは、本来の控除額の80%相当を控除できます。そして2026年10月から2029年9月までは、この割合が50%に縮小します。2029年10月以降は経過措置そのものが終了し、免税事業者への支払いは控除の対象外になります。
つまり今年の10月というのは、まさにこの控除率が半分近くまで落ちる節目のタイミングにあたります。「去年と同じ取引先構成なのに、来期は納税額がさらに増える」という会社が、この秋以降に一気に増えることが予想されます。
取引先の登録状況を把握していないと、想定より納税が増える
厄介なのは、この影響が決算が近づくまで表面化しにくいことです。日々の支払い処理では、相手がインボイス登録済みかどうかを意識せずに経理を進めてしまいがちだからです。
結果として、決算のタイミングで「思ったより消費税の納税額が多い」と気づき、資金繰りの計画が狂ってしまうケースが少なくありません。特に外注比率の高い建設業や運送業、フリーランスへの発注が多いIT・クリエイティブ業界では、影響が大きく出やすい傾向にあります。
まずやるべきことは、主要な取引先がインボイス登録済みかどうかの棚卸しです。国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで登録番号を確認できますし、請求書に登録番号の記載があるかを見るだけでも判断できます。
その上で、未登録の取引先については、次のような対応を検討することになります。
- 登録を促す(価格交渉とセットになることが多い)
- 控除率の縮小分を織り込んで取引条件を見直す
- 代替できる登録済みの取引先への切り替えを検討する
どの対応を選ぶにしても、まずは自社がどれだけの金額を未登録の取引先に支払っているのかを数字で把握することが出発点です。感覚ではなく、実際の支払データを集計してみると、想定以上の金額になっていることも珍しくありません。
まだ取引先のインボイス登録状況を整理していないなら、10月の控除率縮小を迎える前に、一度棚卸しをしておくのがおすすめです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。